死闘のツルッペリン街道
もはや、ヒマージ王国軍の隊長達は、不満を漏らさなくなっていた。
エルレア・メキア女将軍は手を挙げた。
「なぜ、重装歩兵隊を用意するのですか?」
マグギャランは言った。
「それは、重装歩兵隊が密集陣形を取るからだ」
エルレア・メキア女将軍は言った。
「なぜ、密集陣形を取る必要があるのですか」
マグギャランは言った。
「暴走山賊団「闇の腕」は、五人一組で動いている。つまり、「闇の腕」が得意な。五人で一人のヒマージ王国軍の兵士を仕留める、空間を与えないためだ」
講堂の中で、隊長達が拍手をし始めた。
隊長達が言い始めた。
「勝てる、今回は勝てる」
「今までのロチナ将軍は何だったんだ」
「今まで負けていたのは、何だったんだ」
「心が洗われるようだ」
「いける。今回はいける」
マグギャランは演壇を叩いた。
マグギャランは言った。
「なぜ密集陣形を組むか?これには、暴走山賊団「闇の腕」が得意とする五人一組での各個撃破を防ぐ意味とは別の理由がある。重装歩兵隊は、二人一組で組み。暴走山賊団「闇の腕」の一人を攻撃する。逆に各個撃破を仕掛けるところに要点がある」
マグギャランが、そこまで言うと、ヒマージ王国軍の隊長達から、歓声が上がった。
「いける!勝てる!」
「ヒマージ王国軍は強い!」
「いけるぞ!」
「暴走山賊団「闇の腕」を、ぶっ潰す!」
エルレア・メキア女将軍は言った。
「ですが、暴走山賊団「闇の腕」には三メートルを越す大女の山賊が居ます。この女山賊に対して、どう対処をしますか?」
マグギャランは言った。
「矢攻めだ。鎧は着ていないのだろう?」
エルレア・メキア女将軍は言った。
「ええ、そうです。その代わり、ライオンの毛皮を着ています」
マグギャランは言った。
「そういうバケモノ相手なら、クロスボウ隊で矢を射て、重装歩兵隊の槍で刺し殺す。モンスターとの戦い方と同じだ」
マグギャランは言った。
「それでは重装歩兵隊と、クロス・ボウ隊を編成するのだ。クロスボウ隊は、二本の矢を試射させて、初めてクロスボウを使う、兵士にも慣れさせれば良い」
ヒマージ王国軍の隊長達は、やる気が出ていた。
マグギャランは言った。
「それでは今までの話しを纏めよう。ヒマージ王国の軍隊取るべき戦術は、ただ一つ、密集陣形を取り暴走山賊団「闇の腕」の各個撃破を行う。ただし、盾と槍を持った重装歩兵とクロスボウ隊の二隊に編成を行う。戦術は、簡単だ、クロスボウ隊による射撃の後に、重装歩兵隊の前進を行う。それを繰り返す。ただし重装歩兵は二人で一人の山賊を狙う」
エルレア・メキア女将軍は言った。
「それでは、部隊を編成します」
エルレア・メキア女将軍は言った。
そして百人隊長と千人隊長が集まってきた。
マグギャランとエルレア・メキア女将軍達は、話し込んでいた。そして、黒板に白墨で、陣形の様なモノを書いていた。
スカイは良く判らなかったが、現在「ヒース平原」に居る、暴走山賊団「闇の腕」の編成の仕方だった。
スカイは、何時ものエロイ、マグギャランが消えて、別の人間に、なったような雰囲気に、なじめなかった。
突然ルシルスに異変が起きた。
ルシルスはキンキンの甘い声で言った。
「ああっ、何か異変が起きていますよ!私の中の、悪い子の私が、起きそうになって居ます!ダメです、起きては、いけません!いけませんったら、いけません、バタン、キュゥー〜〜」
突然ルシルスは倒れてしまった。
そして倒れたルシルスの雰囲気が変わっていた。
黒く長い髪の毛を幽霊のように垂らして、濃厚な怪しい色気が漂い始めた。
倒れたルシルスは、ゆっくりと起き上がり始めた。
とろんとした、雰囲気は消えていた。
神秘の微笑みを携えた、危険な女サシシ・ラーキーだった。唇が深紅に見えて、顔が白皙の玲瓏な美貌に変わって見えた。
明らかにルシルスとは別人の濃厚な危険なオーラを放っている。
でも、なんか嘘くさいな。
スカイは思った。
どうもルシルスは演技を、しているように思っていた。
本当に二重人格なんて、あるのかよ。
と、スカイは思っていた。
サシシ・ラーキーは言った。
「また、私に会いましたね。スカイ・ザ・ワイドハート、マグギャラン、コロナ・プロミネンス」
スカイは言った。
「どうせ、オマエはルシルスなんだろう」
サシシ・ラーキーは神秘の微笑みを、たたえて言った。
「違います。私は、「戦の秘文字教」の神官ルシルスとは別の人格、「殺しの秘文字教」の神官サシシ・ラーキーです」
スカイは言った。
「どこかで必ずボロを出すだろう。オマエは、やっぱりルシルスなんだろう」
だが、サシシ・ラーキーはスカイを無視して言った。
サシシ・ラーキーは言った。
「私が、ヒマージ王国の兵士達の士気を上げましょう。ヒマージ王国の女性士官の制服を貸してください。私は「戦の秘文字教の神官」ルシルスの能力も使えます。つまり、「戦の歌(バトル・ソング)」を歌い、ヒマージ王国の兵士達の士気を上げる事が出来ます」
マグギャランはサシシ・ラーキーを見て、頷いて言った。
「判った。エルレア・メキア将軍、サシシ・ラーキーにヒマージ王国の女性士官の制服を与えてくれ」
エルレア・メキア女将軍は、ヒマージ王国の女性士官を呼んできた。
サシシ・ラーキーは、女性士官に案内されて行った。
明らかに歩き方も雰囲気も、ルシルスとは違っていた。
マグギャランは言った。
エルレア・メキア女将軍と隊長達は、編成を話していた。
マグギャランが話しの輪から抜け出て、ラメゲの所に来た。
マグギャランは言った。
「ラメゲ、暴走山賊団「闇の腕」の大将首を取ってくれ。スワートル村の騎兵達を遊撃隊として指揮してくれ。そして隙を見て、「闇の腕」の首領を殺してくれ」
ラメゲは言った。
「判った」
スワートル村の村長ダレンと二刀剣の「ヒギア・ゼギンズ」がラメゲの所に来た。
装備を、どうするか、話し合っていた。
スカイが聞いた限りでは、ランス(長槍)を使うか使わないかの議論だった。
この戦争の準備をしている話しにスカイは、不快感を覚えていた。
人間を数字の勘定で殺したりする様な考え方はスカイには、ついていけなかった。
コロンはモジモジしていた。
バゲットはラバナの手を握って励ますような言葉を掛けていた。ラバナは頷いていた。
戦の用意が始まった。
マグギャランはヘルメットだけ被らず、ヒマージ王国の鎧を着て。黒いマントを羽織った。いつもの不真面目なヤツの雰囲気は消えていた。
ラメゲも鎧を着て、背中に十本の剣を背負っていた。
サシシ・ラーキーがヒマージ王国の軍隊の女性士官制服を着て現れた。
とたんに、隊長達の間から溜息が漏れた。
ルシルスは、だぼだぼの秘文字教の神官着を着て居たが。サシシ・ラーキーがヒマージ王国の女性士官のタイトスカートの制服を着ると、スタイルの良さが際立った。
手足が細く長く、頭と身体のバランスも良かった。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道