死闘のツルッペリン街道
右青ゾリのゴドルは言った。
「俺が答えよう。ブレッダー・バゲットは
ヒマージ王国タイダーの商人だ。ラバナ・バゲットはブレッダー・バゲットの一人娘だ。バゲット商会は中堅クラスのグループ企業にかろうじて届くぐらいの規模だ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「あなた達は、なぜ捕まったの」
右青ゾリのゴドルは言った。
「それは、俺達が、予想していない事が起きたからだ。バゲットとラバナが、ヒマージ王国軍を味方に付けているとは考えていなかった。だから、俺達が、この「バラントの街」の城門を潜ったとき捕まった」
キラー・リボンのタリマは言った。
「私達と似たような話ね。私達も、あの三人の冒険屋達が、ヒマージ王国の軍隊を味方に付けているとは考えていなかったの」
右青ゾリのゴドルは言った。
「お前達は何者だ。なぜ、バゲットとラバナを暗殺者が狙うのだ」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「正確に言えば、私達が命を狙っているのは、戦士スカイ・ザ・ワイドハート、騎士マグギャラン、魔法使い見習いコロナ・プロミネンスの三人」
青ゾリ兄弟の右青ゾリのゴドルは言った。
「俺達は、バゲットと、ラバナを捕まる事が仕事なんだ。そして、バゲットとラバナが雇った三人の冒険屋を始末する事だ」
青ゾリ兄弟の左青ゾリのギーンは言った。
殺人雨傘のエプトナは言った。
「私達の依頼主が誰だか判った。ブリリディ・ブリリアントが、私達「可憐暗殺隊」の依頼主よ」
七徳剣のミルカラは言った。
「ブレッダー・バゲットが雇った、三人の冒険屋、騎士マグギャラン、戦士スカイ・ザ・ワイドハート、魔法使い見習いコロナ・プロミネンスの三人を殺す様に、ブリリディ・ブリリアントが暗殺者ギルドに依頼したのね」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「随分とバカな話ね。商人の商売敵同士で、冒険屋(アドベンチャー)相手に悪漢(ローグ)達や暗殺者達を雇うなんて」
左青ゾリのギーンは言った。
「俺達を悪漢と呼ぶな!俺達は訳があって。カネが必要なんだ!」
右青ゾリのゴドルは言った。
「俺達が、やっている事が悪い事である事は十分判っている。だが、俺達には理由があるんだ」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「どう、私達で手を組まない?」
右青ゾリのゴドルと左青ゾリのギーンは顔を見合わせた。
右青ゾリのゴドルは言った。
「どうするつもりだ」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「私達は戦士スカイ・ザ・ワイドハート、騎士マグギャラン、魔法使い見習いコロナ・プロミネンスを殺す事が仕事なのよ。ブリリディ・ブリリアントが依頼した事は間違いない」
七徳剣のミルカラは言った。
「でも、商人同士の小競り合いの片棒を担ぐとは悲しい話ね」
キラー・リボンのタリマは言った。
「私達暗殺者は常に悲しいのよ。真相を知らなかった方が、良かったかもしれない」
右青ゾリのゴドルは言った。
「判った。お前達と協力しよう」
左青ゾリのギーンは言った。
「兄者、暗殺者を信用して良い物だろうか」
右青ゾリのゴドルは言った。
「この女達を信用しなければ、俺達は、まず、牢屋から出る事が出来ない」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「賢明な判断ね」
キラー・リボンのタリマは言った。
「それじゃ、ルマナ、牢屋の鍵を開けて」
毒針空気銃のルマナは言った。
「判った」
毒針空気銃のルマナは、針金を使って、青ゾリ兄弟の牢屋の鍵を開けた。
七徳剣のミルカラは言った。
「私達の武器が、どこに在るか判る?」
左青ゾリのギーンは言った。
「俺達の剣を、守衛室に持ち込む、ところを見た」
右青ゾリのゴドルは言った。
「そうだ。間違いない」
キラー・リボンのタリマは言った。
「守衛室は、確か、この建物の牢屋がある地下へ続く階段の近くに在ったけれど」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「多分、私達の武器も、守衛室に在るはずよ」
右青ゾリのゴドルは言った。
「判った」
青ゾリ兄弟と可憐暗殺隊は、無人の守衛室に入った。
守衛室の机の上には、青ゾリ兄弟達の剣と、可憐暗殺隊の武器が在った。
右青ゾリのゴドルは、剣を持った。その剣は、ロング・ソードの柄に分銅鎖が付いた武器だった。
キラー・リボンのタリマは言った。
「随分と変わった武器を使うのね。バタンの暗殺武器とも違うようだけれど」
右青ゾリのゴドルは言った。
「オレと、ギーンは、マンティコア流剣術を使うのだ。この剣は「サソリの尾」と言う武器だ」
左青ゾリのギーンは言った。
「兄者の言うとおり、俺達「青ゾリ兄弟」はマンティコア流剣術を使うのだ。オレはショート・ソード二本を両手で使う。お前達の方こそ、変わった武器を使うだろう」
キラー・リボンのタリマは言った。
「私の武器は、鋼鉄の薄い刃の付いたキラー・リボンよ」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「私の武器は、暗殺用の傘キラー・アンブレラ」
七徳剣のミルカラは言った。
「私の武器は七つの凶器を内蔵した折りたたみ式の七徳剣マックス・カリバー。この剣は、普通の剣の八倍の重さが在るから、腕力の在る私ぐらいしか使えないの」
毒針空気銃のルマナは言った。
「私は、毒針を発射する三連空気銃を使うの」
右青ゾリのゴドルは言った。
「大体、お互いの戦い方は武器から見当が付くな」
左青ゾリのギーンは言った。
「兄者!俺達は牢屋から出たが、どうやって、封鎖されている。「バラントの街」の門から出て行くんだ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「そうね。私達は、どうやって、この「バラントの街」から出て行くかが問題ね」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「馬を奪うしか無いか」
七徳剣のミルカラは言った。
「私の馬は殺されたのよ」
毒針空気銃のルマナは言った。
「馬泥棒をするのは気が引けるよ」
右青ゾリのゴドルは言った。
「俺達の馬も、どこに行ったか判らないな」
左青ゾリのギーンは言った。
「兄者、馬を捜すんだ」
青ゾリ兄弟と可憐暗殺隊は、不慣れな「バラントの街」の中を彷徨うように歩いていた。「バラントの街」の大通りは人が誰一人居なかった。
既に避難をしているようだった。
青ゾリ兄弟と可憐暗殺隊は、「バラントの街」のスラム街に来た。
殺人雨傘のエプトナは言った。
「私達の生まれ故郷の「アッセブルの街」のスラム街と同じね。どこにでも、スラム街は在る訳か」
キラー・リボンのタリマは言った。
「カッカク病の、お母さんが心配になって来ちゃった」
七徳剣のミルカラは言った。
「大丈夫よ。タリマの、お母さんは、バタンの一族が面倒を看るから」
青ゾリ兄弟のゴドルは言った。
「キラー・リボンのタリマよ、お前の母親は不治の病カッカク病に、かかっているのか」
キラー・リボンのタリマは言った。
「そうよ。あと一月しか生きられないって闇医者の先生は言っているの」
左青ゾリのギーンは言った。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道