死闘のツルッペリン街道
ブリリディ・ブリリアントはヒゲン・デパーロ達「ウォリア殺投術ヒゲン道場」の一行と共に馬車で移動を開始した。ツルッペリン街道を西へ。
投げ殺しのサナール達五本指は、暴走山賊団「闇の腕」の幹部会議をテントの中で開いていた。目的は「バラントの街」を攻め取るか攻め取らないかだった。
だが、暴走山賊団「闇の腕」は内部で問題を抱えていた。首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は、消極的だったのだ。
暴走山賊団「闇の腕」首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は黒い帽子を被り、方から、黒いクマの毛皮を割れた腹筋が見える裸の上半身に着て腰に「断裂刀」と呼ばれる片刃の曲刀を背負っていた。
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「俺達「闇の腕」は、バーリ・ゾーダの兄貴の弔いを続けなければならない。「血の報復」を続けるのだ」
身長が三メートル以上ある筋骨隆々とした体格の、バラール姉妹の姉である、副首領「戦斧使いのモンガ・バラール」は黒いタンキニを着て、その上から、ライオンの毛皮を羽織っていた。そして重さが一トンある巨大な戦斧を持っていた。
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「そうだよ、あたし達は、バーリ・ゾーダ
の兄貴に恩義が在るのさ」
バラール姉妹の妹、身長二メートル近くの「鉄手のガラン・バラール」は青いタンキニを着て、両手の鋼鉄製のブラス・ナックルをガチンと打ち合わせていた。
バラール姉妹の妹「鉄手のガラン・バラール」は言った。
「ヒマージ王国は偽金フィーバーで、ヒマージ王国の通貨グーの価値が下がっちまった。
ヒマージ王国は、経済がガタガタなんだよ。あたし達は、見世物か山賊になるしか生きる道が無かったのさ」
投げ殺しのサナールは言った。
「ガランの姉貴。オレがガキの頃から、「ウドルの街」は経済がガタガタよ。オレなんか、悪い事全部やらなければ、生き残る事が出来なかったんだよ。メシを食うためには、盗み、恐喝、かっぱらい、かつあげ、人殺し何でもしたものさ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「ヒマージ王国の財務院の総院長ブラッキー・デーンが、税金の不足分を補うために偽金を作っているって言う噂だ。そして、偽金作りの責任をギカセ・センに押しつけてダンジョニアン男爵の迷宮競技で殺したって話しだ」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「山賊の俺達は、農民の一揆と言えないが。あたし達「闇の腕」に集まってくるヤツらは、食えなくなったヤツ等も多いわけだよ」
バラール姉妹の妹「鉄手のガラン・バラール」は言った。
「あたし達は正義の義賊を気取る気は無いが。バーリ・ゾーダの兄貴の弔いはキッチリとケジメ付ける必要があるよ」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「いや、このまま、あたし達で国を作るべきだよ。ヒマージ王国から独立した国さ」
投げ殺しのサナールは言った。
「ヒマージは、中コモンの大国だぜ。独立なんか出来るとは思えないな」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「いや、出来るよ。実効支配をすればいいんだよ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「今の俺達「闇の腕」は、バーリ・ゾーダの兄貴の弔い合戦という名目で、略奪をしているが。俺達は、山賊だ。国を作る事は難しいだろう」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「昔、イシサ聖王国が出来る前に、ザリアナ帝国という帝国が在ったのさ。そのザリアナ帝国の皇帝は、山賊出身だったんだよ。
あたし達だって、やれば出来るさ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は面白くなさそうに言った。
「フラクター選帝国にでも、助けを求めるか。俺達は、やっぱり山賊だ。街や村を襲撃して奪う事は出来ても、国を運営する事は出来ないだろう」
副首領の「戦斧使いのモンガバラール」は言った。
「今のヒマージ王国だって、国王も貴族達も、高級官僚達だってボンクラ達の集まりさ。国を運営するのは、実際は下っ端の下級役人達だよ。ヤツ等を上手く利用すれば良いのさ。あたし達だって、下級役人達を利用すれば、ヒマージの国王や貴族達に成り代わる事も出来るって寸法だ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「本気か、モンガ」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「あたしは本気だよ。リッヒル」
バラール姉妹の妹「鉄手のガラン・バラール」は言った。
「そういえば、バーリ・ゾーダの兄貴も言っていたね。「闇の腕」は、ヒマージ王国を潰すってね。バーリ・ゾーダの兄貴の遺言なら、あたし達は、ヒマージ王国を滅ぼさなければならないよ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「俺達「闇の腕」を潰す事は良くないだろう」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「あたし達「闇の腕」を潰すんじゃ無い、ヒマージ王国を潰すんだよ。このまま、ツルッペリン街道を東に進んで、仲間を増やして巨大な山賊団になるのさ。ヒマージの首都タイダーまで行くのさ、そして、あたし達がヒマージを奪うんだよ」
バラール姉妹の妹の「鉄手のガラン・バラール」は言った。
「ヒマージ王国軍は弱いよ。あたし達と戦えば負け続けるだけさ。こんなに弱いヤツ等が、よくヒマージを支配してきたと思うぐらいの弱ささ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「ヒマージ王国は講和の密使を送ってきた。
俺達「闇の腕」を、ヒマージの男爵に封じるという話しだ。悪い条件じゃ無いだろう。この条件を?むべきだ」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「ヒマージ王国の言う事なんか信じられるものかい。講和なんか後で裏切るための下準備さ」
バラール姉妹の妹の「ガラン・バラール」は言った。
「そうさ、懐柔するためのアメを見せて、後でムチで殴るのさ。ヒマージの権力なんか、そんなものさ」
投げ殺しのサナールは言った。
「確かに俺も、ヒマージの権力は信用できないな。ガキの頃からの敵だ。ヤツ等の汚さは良く知っているよ。講和なんか絶対ウソだよ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
「それなら、これから、どうするんだ。バーリ・ゾーダ兄貴の弔いの「血の報復」を続けるのか」
弟分の「一番槍のガホー・ガンダル」は、割れた腹筋を見せながら、虎の毛皮を肩から羽織っていた。名槍「一番槍」という槍を持っていた。
一番槍のガホー・ガンダルは言った。
「俺はリッヒルの兄貴を支持する」
投げ殺しのサナールは言った。
「ガホー。ヒマージなんか滅ぼそうが何しようが構わないんだよ。ヤツ等と講和なんか有り得ないんだよ」
副首領の「戦斧使いのモンガ・バラール」は言った。
「そうさ。サナールの言うとおりだよ。このまま「血の報復」を続けて、ヒマージの首都タイダーまで攻め上ってヒマージを奪って、あたし達「闇の腕」がヒマージを支配するのさ」
首領の「断裂刀のリッヒル・メラーニ」は言った。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道