死闘のツルッペリン街道
ビーゼル隊長は言った。
「我々の仕事は護衛である。雇い主の命令とあれば、何時いかなる場所でも死ぬのである」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「このまま、暴走山賊団「闇の腕」の支配地域の平原を走り抜けるのか?」
ビーゼル隊長は言った。
「雇い主の命令であるならば、我々は厭わず、突撃するのである」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「私は、「懐かしのウタタ」まで行かなければならない。私の馬車を護衛して突撃をしてくれ」
ビーゼル隊長は言った。
「了解である!「ベルゲンの死の猟犬騎兵団」よ!我々は平原を突破するのである!総員突撃せよ!」
ビーゼル隊長が言うと「ベルゲンの死の猟犬騎兵団」は、三角陣を敷き、ランスを構えて突撃を開始した。
ブリリディ・ブリリアントの乗った馬車はツルッペリン街道から外れて、バラントの街の横の平原に入っていった。
石で舗装された平らなツルッペリン街道と違い、ガタガタと激しく揺れた。
ビーゼル隊長の指揮する「ベルゲンの死の猟犬騎兵団」は突撃をしていった。
だが、暴走山賊団「闇の腕」の山賊達が、次々と飛びかかってきた。
最初はランス(長槍)でのチャージが成功していたが。続けて、何人もの山賊をランスで仕留める事は出来なかった。「ベルゲンの死の猟犬騎兵団」は、ランス(長槍)を捨てて、剣を抜いて、暴走山賊団「闇の腕」と戦い始めた。
だが、「ベルゲンの死の猟犬騎兵団」は次々と、馬から落とされて、暴走山賊団「闇の腕」に戦斧や剣、槍で攻撃された。
ビーゼル隊長も剣で切り結んだが、多勢に無勢で、槍で馬を仕留められた、落馬した。
そこに戦斧を持った、暴走山賊団「闇の腕」
の山賊達が、攻撃を加えた。
ブリリディ・ブリリアントの馬車の御者が言った。
「旦那様、降参します」
ブリリディ・ブリリアントの乗った馬車は、
殺気立った、暴走山賊団「闇の腕」の山賊達に囲まれた。
馬車の扉が開けられた。
戦斧を持った男の山賊が飛び込んできた。
そしてブリリディ・ブリリアントにナックル・パンチを振るった。
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「カネなら出す!私を殴らないでくれ!」
だが、ブリリディ・ブリリアントは、馬車から引きずり下ろされた。
草地にブリリディ・ブリリアントの顔を押しつけられた。
ブリリディ・ブリリアントの腹に山賊の蹴りが当たった。
そして山賊達に殴る蹴るの暴行を受けた。
山賊の一人が叫んだ。
「ソイツは金持ちだ。殺さないで、身代金を要求するんだ!」
他の山賊は言った。
「それなら、死なない程度に殴るんだ」
別の山賊が言った。
「そうだ。たっぷりと殴るんだ」
モンドマーネー劇団の乗った馬車は「バラントの街」に近づいた。ツルッペリン街道と繋がっている東門は閉じられている。
カナリス・モンドマーネーは言った。
カナリス・モンドマーネーは言った。
「俺達は、アロハシャツの父親と娘と、金髪三白眼の戦士、黒髪イケメンの騎士、三つ編みの女魔法使いの五人を追っているんだ」
山賊は言った。
「あ、それは、「投げ殺しのサナール」の兄貴が探している五人だよ。だが、「バラントの街」に逃げ込まれたんだ」
「サナールの兄貴!今度は、紫色の馬車に乗った奴が突撃をしてきたが。俺達が護衛を殺して、馬車に乗った奴を引きずり出して捕まえたんだ」
投げ殺しのサナールは言った。
「なんだよ、「バラントの街」の城攻めを前にして、次から次へと訳の、わからないヤツ等が来るな」
ヒゲン・デパーロは言った。
「紫色の馬車?乗って居るヤツは、もしかして、金髪の男じゃ無いか。名前はブリリディ・ブリリアントのはずだ」
投げ殺しのサナールは言った。
「師匠、知り合いか?」
ヒゲン・デパーロは言った。
「まあな。ちょっばかり、恩を売って、おきたい相手だ。連れてきてくれ」
投げ殺しのサナールは言った。
「師匠、判った。部下達に連れて、こさせる」
全身に殴られた跡の在る、上半身裸のブリリディ・ブリリアントと、同じように上半身裸で、殴られた跡の在る御者が連れてこられた。
ブリリディ・ブリリアントは酷い有様だった。眼鏡のレンズが割れて、髪の毛は、ぼさぼさになって。青タンが顔に出来て、鼻血が出て、全身にアザが出来ていた。
ヒゲン・デパーロは言った。
「ブリリアントの旦那、久しぶりだな」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「お前達は、「ウォリア殺投術ウドル道場」
の五人だな」
ヒゲン・デパーロは言った。
「ああ、そうだよ。ブリリアントの旦那」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「お前達は、何で、ここに居るんだ」
ヒゲン・デパーロは言った。
「へへっ、俺達は、バゲットとラバナを追って、ここまで来たんだ。五百ネッカー(5000万円)を手に入れるためにな」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「ここは、暴走山賊団「闇の腕」の本拠地だ。なぜ、お前達が、ここに居るんだ」
ヒゲン・デパーロは言った。
「まあ、俺達、裏社会の人間は、色々な所に顔が利くって事よ。旦那衆には判らない事さ」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「これから、どうするつもりだ。私を人質にして、身代金を要求するつもりか」
ヒゲン・デパーロは言った。
「俺達は、ヒマージ王国の官憲と対立する気はねえよ。ブリリアントの旦那も、目をつぶって、ここで見た事、聞いた事は無しとしようや」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「どういうことだ、言っている意味が判らないぞ」
ヒゲン・デパーロは言った。
「俺達が口を利いて、ブリリアントの旦那の身柄を解放するって事だ」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「そんな事が出来るのか」
ヒゲン・デパーロは言った。
「まあな、蛇の道は蛇って言うじゃねぇか。俺達に任せれば、ブリリアントの旦那も、身柄が解放されるってことだ」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「これから、どうするつもりだ」
ヒゲン・デパーロは言った。
「今、バゲットとラバナは、雇った三人の冒険屋と一緒に、「バラントの街」に逃げ込んだ。だが、バゲットとラバナは「手形」を持って、必ず、「バラントの街」から出てくるはずだ。ブリリアントの旦那と、俺達は、ツルッペリン街道を西に向かって走り、「懐かしのウタタ」までの道を先に行くって事だ」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「私は生まれて初めて、他人から殴られた。父親も母親も殴らなかった」
ヒゲン・デパーロは言った。
「随分と上品な育ちじゃ無いか旦那衆は。
俺達の様な裏社会の人間とは住む世界が違うって事だ」
赤唐辛子のガラシは言った。
「おい、ヒゲン。サナールが、馬車を用意したぜ。そろそろ出発だ。ブリリアントの旦那の馬車も用意したそうだ。捕まっていた、ブリリアントの旦那の御者も解放されたそうだぜ」
ヒゲン・デパーロは言った。
「それでは、ブリリアントの旦那、俺達はツルッペリン街道を西に進もうや」
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道