死闘のツルッペリン街道
「判ったよ、師匠。俺達「闇の腕」に通達を出すよ。捕まえるまで、待ってくれ。俺達は、これから「バラントの街」を攻め落とす予定なんだ。バラントの街は伯爵領の首都だ。今までの様な、男爵領とは桁が違う。攻め落とせば、街の中を略奪し放題で大金が手に入るって寸法だ。師匠も「闇の腕」に参加すればいいのにな」
可憐暗殺隊は、ツルッペリン街道を西へと馬を走らせていた。
ツルッペリン街道の側道の街道警邏隊の宿営所から髪の毛を逆立てた、上半身裸の山賊達が手に武器を持って現れた。
暴走山賊団「闇の腕」は、五人居た。
山賊1は言った。
「へへっ、女だ、それも上等のギャル達ばかりじゃねぇか。ワシの嫁にしてやる」
山賊2は言った。
「ワシ等の嫁にするのじゃ。ワシは嫁を五人持っているのじゃ。更に嫁が増えるのじゃ」
山賊3は言った。
「ワシは嫁を四人持っているんじゃ」
山賊4は言った。
「ワシが嫁にした後離婚して、また、別の女を嫁に貰うのだ。それを一日に何度も繰り返すのじゃ」
山賊5は言った。
「ワシは、離婚された女と結婚して、また離婚するのじゃ。そして、また別の女と結婚するのじゃ」
可憐暗殺隊の馬は無言で散開した。
タリマはキラー・リボンを馬上で操った。
薄い鋼の刃で出来たキラーリボンが、山賊1の上半身に絡まった。
キラー・リボンのタリマは言った。
「ごめんなさい」
そして馬の勢いで、キラー・リボンを引っ張った。山賊1の上半身がバラバラに切り刻まれて肉片となった。
タリマはキラー・リボンをクルクルと回して。集めた。
殺人雨傘のエプトナは、馬の鞍の上に立った。
そして馬は走った。
エプトナは、空中に飛んだ。一瞬の擦過。
エプトナは山賊2の両肩に足をついて、飛び乗った。エプトナは、殺人雨傘の先端を山賊2の額に突き刺した。
そしてエプトナは両肩に着地した勢いを利用して更にジャンプして、馬の鞍に空中で一回転して飛び乗った。
殺人雨傘のエプトナは言った。
「ふん、山賊が、バタンの暗殺者に敵うと思ったの」
七徳剣のミルカラは七徳剣マックス・カリバーから、マシェット(山刀)を伸ばした。
七徳剣のミルカラは馬を山賊3に向けて走らせた。
戦斧を振りかぶった山賊に向かって馬を走らせた。ミルカラは馬を少しずらしながら、鞍から身を乗り出し、右手で鞍を持って左手一本で七徳剣マックス・カリバーを操った。
山賊3と交差する瞬間、リーチの長いミルカラの七徳剣マックス・カリバーのマシェットが、山賊3に向かって、振り抜かれた。
山賊3は首を刎ねられた。
七徳剣のミルカラは言った。
「殺りました」
毒針空気銃のルマナは、両手で毒針空気銃を持って、山賊4と山賊5に毒針空気銃の照準を合わせた。
そして連続して撃った。
致死性の毒薬「ゴロリ」毒針を首筋に受けた、山賊4と山賊5が倒れた。
毒針空気銃のルマナは言った。
「余裕でデス」
可憐暗殺隊は、ツルッペリン街道を西へと馬を走らせた。
殺人雨傘のエプトナは言った。
「何が、暴走山賊団「闇の腕」よ、弱いじゃ無い」
キラー・リボンのタリマは言った。
「数が五人だけだったからよ。油断をしてはダメよエプトナ」
七徳剣のミルカラは言った。
「そうね。コレから先、弱い山賊ばかりとは限らない」
毒針空気銃のルマナは言った。
「ルマナは二人殺したよ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「ダメよルマナ。本当は私達暗殺者ギルドの暗殺者達は、お金を貰った場合以外、人殺しをしてはいけないの」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「暴走山賊団「闇の腕」なんて、モンスターと同じでしょ」
七徳剣のミルカラは言った。
「モンスターも人権が在るってフラクター選帝国では言うんだって」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「なに知ったかぶりしているのよミルカラ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「私達は、暴走山賊団「闇の腕」とはいえ、人の命を殺めてしまった。その咎を負わねばならない」
カナリス・モンドマーネー達「モンド・マーネー劇団」は、髪の毛を逆立てて上半身裸になって、暴走山賊団「闇の腕」に変装した。
そして手に武器を持って、ツルッペリン街道を西へと馬車を走らせていた。
髪の毛を逆立てて、タンキニを着た、女優ラーナ・マピルが、手に戦斧を持ったまま言った。
「こんな、みっともない格好は嫌ですよ」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「俳優とは、いかなる役も、こなさなければならないのだよ。たとえ暴走山賊団「闇の腕」の役でも同じなのだよ。今は演目「迸る熱い野生」の上演中なのだよ」
女優メロア・ソペラは言った。
「そうよ、今の私達は、無軌道な、若者達の、暴走する魂の象徴、暴走山賊団「闇の腕」を演じているのよ」
男優アギド・モールズは言った。
「俺、もう付いていけませんよ」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「俳優とは、あらゆる役を、こなさなければならない。下積みの時期を越えていくのさ、アギド」
女優ラーナ・マピルが怯えた声で言った。
「大変ですよ。暴走山賊団「闇の腕」が検問所を作っていますよ」
髪の毛を逆立てて、上半身裸で、手に武器を持った、暴走山賊団闇の腕が待ち構えていた。
カナリス・モンドマーネーは言った。
「まあ、僕とメロアの演技に任せてくれ」
五人の山賊達が、カナリス達の乗った馬車を止めた。
「なんで、オマエ等は、四人なんだ。俺達、暴走山賊団「闇の腕」は、五人一組で動くのだ」
カナリス・モンドマーネーは涙を流しながら言った。
「俺達は街道警邏隊と戦ったんだ、だが一人死んでしまったんだ」
女優メロア・ソペラは言った。
「そうさ、アタイ達は、街道警邏隊の兵士達を殺して鎧兜を分捕ったのさ。だが、仲間の、ナニガが死んじまったんだよ。街道警備隊の四人までは殺せたんだ。だが、ナニガのヤツが死んじまったんだよぉ」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「だが、俺達は、分捕り品を手に入れたんだ。ナニガが死んだ復讐を街道警邏隊にしてやったんだよ」
男優アギド・モールズと女優ラーナ・マピルは、後ろで演技をして泣いていた。
暴走山賊団「闇の腕」の山賊は涙を流して言った。
「そうか、お前達は、勇敢な「闇の腕」の一員だ」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「そうさ、俺達は、バーリ・ゾーダの兄貴の弔い合戦「血の報復」でヒマージ王国の連中達に恐怖の二文字を教えてやるんだ」
暴走山賊団「闇の腕」の山賊は涙を流していった。
「オマエは、生粋の「闇の腕」の一員だ。最近新しく入ったヤツ等は、略奪することしか考えていないんだ。だが、俺達「闇の腕」は、バーリ・ゾーダの兄貴の意志に誓って、ヒマージ王国を滅ぼす事が目的の筈なんだ…」
スカイ達八人と、スワートル村の男女達三百二十八人は、「ヒース平原」が見える所まで来た。
眼下に見下ろす「ヒース平原」には、暴走山賊団「闇の腕」が、野営している。
今、丁度昼時の為か、煙が上がっている。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道