死闘のツルッペリン街道
スカイは五人の山賊達に追いかけられて逃げ回りながら言った。
「俺に言っても魔法の事は判らないよ」
マグギャランは言った。
「こら、スカイ、バカ者!なに逃げ回っているのだ!戦え!」
スカイは言った。
「オレは人殺しはしないんだよ!」
マグギャランは言った。
「ええい、世話の掛かるヤツだ!」
マグギャランはスカイに加勢に入った。
スカイは言った。
「止めろよ、殺す気か」
マグギャランは言った。
「そうだ」
ラメゲと、道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」もスカイの加勢に入った。
スカイは言った。
「おい、止めろよ、殺すなよ」
だが、マグギャランとラメゲと、道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」の剣はスカイを追いかけ回していた五人の山賊達を次々と切り伏せた。
コロンが「大型炎のコマ」で燃やして転げ回っている、五人の前に、スカイ達八人は集まった。
マグギャランは言った。
「随分と手間を掛けさせてくれたな」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「あんた等、このスワートル村で何を、やったんだい」
二十五人隊の隊長ロベゴは火で燃えて転げ回りながら言った。
「あちっ、俺達は、バーリ・ゾーダの兄貴が、あちっ、ダンジョニアン男爵の迷宮競技で殺された復讐の為に、あちっ、「血の報復」という襲撃を開始したんだ」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「そんな事は聞きたくないよ。このスワートル村で何をしたんだ」
二十五人隊の隊長ロベゴは火で燃えて転げ回りながら言った。
「この村は、あちっ、俺達「闇の腕」が来たときには、あちっ、既に、もぬけの殻だったんだよ。あちっ、大して略奪する物も無かったさ、馬だけが、やたらと居る村さ」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「それだけ聞けば十分だよ」
そして、右手の剣で二十五人隊の隊長ロベゴの首を切り落とした。
マグギャランとラメゲも、残りの火で燃えている四人の山賊達を切り伏せた。
スカイは言った。
「なんで殺したんだよ。捕まえて縛り付けて、おけばいいだろう」
マグギャランは言った。
「スカイ、もし生かして置いたらどうなる?コイツ等を仲間の「闇の腕」の連中が見つけて助けたら、俺達の情報は筒抜けになる」
ラメゲは言った。
「どのみち、この火傷だ、助かりはしない」
コロンは頭を押さえて言った。
「……どうしよう、あちゃしが、使い慣れていない……魔法を使ったから」
マグギャランは言った。
「これはヒマージ王国の内戦だ気にするなコロン」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「これから、スワートル村の「隠れ場所」へ行くよ」
マグギャランは言った。
「どういうことだ」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「爺様や婆様達の昔からの知恵さ。絶望と頸木の王がコモンを統一する以前の昔から、スワートル村は、戦争に巻き込まれたときに、逃げ込む「隠れ場所」を用意しているのさ」
スカイは、殺された二十五人隊の隊長ロベゴを見た。気になることが在った。
腰の皮のポーチが何となく携帯電話が入るサイズだったのだ。
スカイはロベゴの死体を調べた。
案の定、携帯電話が出てきた。
「コイツ、携帯電話を持っているぜ」
マグギャランは言った。
「どういうことだ。俺達が、「バラントの街」に向かい始めてから、携帯電話は繋がらなかった筈だ」
ラメゲがアヒルのストラップが付いた携帯電話を取り出して確かめていた。
「いや、繋がっている」
マグギャランは言った。
「ふむ、これは、情報戦だ。暴走山賊団「闇の腕」は、自分たちの支配地域だけに、携帯電話の中継局を残している。だから、外には繋がらない筈だ」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は、言った。
「アタシの携帯電話を掛けてみるよ」
そして黒い携帯電話を取りだして掛けた。
「アタシだよ、ヒギアだ。携帯電話が部分的に繋がるんだよ、情報を教えてくれ…」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は携帯電話の通話を終えると言った。
「どうやら、スワートル村の村人達は、全員「隠れ場所」に逃げ込んで難を逃れたようだ」
ラメゲは言った。
「これから、どうするつもりだ、「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「スワートル村の村人達は皆、馬に乗って居る。アタシ達スワートル村の村人は、軍馬を育てているから、子供の頃から読み書きを覚えるよりも先に馬の乗り方を学ぶんだ。だが、何時までも「隠れ場所」には居られない。食料や水が尽きてしまう。だから、爺様や婆様達は、移動を考えている」
マグギャランは言った。
「どこに移動するつもりだ、「クメーヌの街」でも目指すか?」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「子供や年寄りは「クメーヌの街」を目指す。だが、戦える男達や女達は「バラントの街」を目指すそうだよ。携帯電話で「バラントの街」に籠城した、ヒマージ王国軍が助けを求めているんだ。アタシ達スワートル村はヒマージ王国に納入する軍馬を育てている。だから、ヒマージ王国軍を見捨てるわけにはいかないんだよ」
マグギャランは言った。
「そうか、それでは、俺達の向かう方向と一緒だな」
バゲットは言った。
「暴走山賊団「闇の腕」が「バラントの街」の近くに居る以上、ツルッペリン街道は、封鎖されている「手形」を「懐かしのウタタ」に届けるためには、「バラントの街」を通るしか無い」
ラバナは言った。
「そうよ、届けるのよ」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「それじゃ、「隠れ場所」から出てくる、スワートル村の若い衆達と合流するよ」
スカイ達八人は、馬に乗って山道に入っていった。
既に、馬に乗った、二十代ぐらいから四十代ぐらいの男女が手に、剣や槍などの武器を持って待っていた。皆、テンガロン・ハットに、カウボーイの様な格好をしている。
その数は大体、三百人から三百五十人ぐらいだった。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「ダレン!アタシだよ、ヒギア・ゼギンズだ!」
口髭を生やした四十代後半の男が出てきて言った。
「久しぶりだ「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「紹介するよ、スワートル村の村長のダレンだ。ダレン、アタシが連れている八人は、騎士マグギャラン、剣士ラメゲ・ボルコ、戦士スカイ・ザ・ワイドハート、魔法使い見習いコロナ・プロミネンス。ルシルスと、バゲットとラバナだ」
村長のダレンは言った。
「騎士?プラチナ・プレートを持った騎士か?」
マグギャランは胸元からプラチナ・プレートの騎士証を見せて言った。
「うむ、そういう過去と現在が在るのだ」
村長のダレンは言った。
「ヒマージ王国の騎士団の騎士なのか?」
マグギャランは言った。
「違うのだ。今は自由騎士(フリーランサー)のマグギャランという者だ」
村長のダレンは言った。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道