死闘のツルッペリン街道
スカイ達は、ツルッペリン街道を西へと走った。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」が言った。
「ここから、側道に入ってくれ。なだらかな山道だよ。馬の足なら、半円を描いて、迂回しているツルッペリン街道よりも時間の短縮が出来る」
ラメゲは言った。
「判った」
バゲットは言った。
「道案内に任せる」
ラバナは言った。
「そうよ、任せるのよ」
スカイ達は側道に入っていった。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」が言った。
「ここから先はマードグ男爵領だよ、あたしの故郷のスワートル村へ向かうよ」
バゲットは言った。
「そう言う条件だ」
ラバナは言った。
「そうよ、そう言う条件なのよ」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「ありがとうよ。このまま、スワートル村へ抜けるよ」
スカイ達三人、バゲットとラバナ、ラメゲと、ルシルス。ヒギア・ゼギンズは馬を走らせた。丘を幾つも超えたところで平原が出てきた。山に囲まれた平原だった。
そして平原では馬が放し飼いにされていた。
道案内のヒギア・ゼギンズは言った。
「着いたよ。ここが、あたしの故郷スワートル村だよ」
スワートル村の中に入っていった。スワートル村には焼き打ちされた跡が在った。村の家々は、扉が、こじ開けられ、中が荒らされているようだった。
だが、死体らしい死体も無かった。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「良かった。みんな逃げたようだね」
スカイは言った。
「そうか、それじゃ、ツルッペリン街道に戻るか」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
ラメゲは言った。
「待て、殺気がする」
スワートル村の家々から、上半身裸で、髪の毛を逆立てた、暴走山賊団「闇の腕」が出てきた。手には剣や戦斧や槍を持っている。
白い髭を生やした六十歳ぐらいの男が言った。
「ワシ等は、暴走山賊団「闇の腕」じゃ、ワシは二十五人隊の隊長ロペゴじゃ。こんな所で、油を売っていた甲斐が在るのじゃ。凄い美人が居るでは無いか、ワシの嫁にするのじゃ」
ルシルスが言った。
「嫌ですぅ」
何か喜んでいるような声だった。
スカイは言った。
「まずいな、馬に乗って逃げようぜ」
マグギャランは言った。
「ダメだ。今ここで戦う必要がある」
ラメゲは言った。
「その通りだ。我々の存在を他の山賊達に知られては困る。山賊達が集まる前に始末しなければならない」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「助かるよ」
二十五人隊の隊長ロペゴは言った。
「ワシ等は二十五人じゃ、オマエ等は八人だぞ、ワシ等の勝ちじゃ」
スカイは腰の剣を抜いた。
マグギャランも腰の剣を抜いた。
ラメゲは背中に背負った十本の剣から二本を引き抜いて両手に持った。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」も
両腰の剣を抜いて、両手で構えた。バゲットとラバナは後ろに下がった。
コロンとルシルスも後ろに下がった。
二十五人隊の隊長ロベゴは言った。
「ワシ等、「闇の腕」は五人一組で戦うのじゃ」
スカイの前に槍と剣と、戦斧を持った山賊達が五人やって来た。
マグギャランの前にも五人。
ラメゲの前にも五人。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」の前にも五人。
コロン、バゲット、ラバナ、ルシルスの前にも五人の山賊達が来た。
スカイは言った。
「何だよ、五人相手に戦うのかよ」
スカイは五人の山賊達に囲まれた。
二人が槍を持っていて、二人が戦斧を持っていて、一人が剣を持っている。
マグギャランが言った。
「スカイ!バカ者!なに囲まれているのだ!」
マグギャランは囲まれる前よりも先に、攻撃を山賊達に加えていた。
ラメゲは言った。
「三の剣バラン流大カミソリ術皆伝技「猫の八方睨み」!」
ラメゲが言うと。五人の山賊達は動けなくなった。
そして、ラメゲは、ほぼ一瞬で五人の山賊達の首を刎ねた。
スカイは剣を振るった。リーチの長い槍は避けて、戦斧使いの山賊に斬りかかった。
案の定、スカイが戦斧使いの山賊に斬りかかると、リーチの長い槍を持った二人が、スカイの背後から突きを入れるように突撃してきた。
だが、スカイは逃げ足が速かった。
猛然とダッシュして、戦斧使いの山賊の逆立った髪の頭に手を着いて、はさみ跳びでジャンプして、包囲を脱出した。
スカイは言った。
「へっ、逃げ足の速さなら、天下一品よ」
二十五人隊の隊長ロベゴはルシルスを見て言った。
「なんて良い女なのじゃ。生まれて、この方、こんな良い女を見たのは初めてじゃ。なんとしてもワシの嫁にするのじゃ」
ルシルスは黄色い声を出して言った。
「いやん。そんな目で見つめちゃイヤ」
コロンは、ぐるぐる回る火の玉を作り出した。
コロンは言った。
「……火炎魔法「大型炎のコマ」」
コロンの炎のコマが、ぐるぐると、コロン、バゲット、ラバナ、ルシルスを守るように動いた。
そして包囲した、二十五人隊の隊長ロベゴと四人の部下達を次々と炎のコマが激突して燃やしていった。
炎のコマが激突した、二十五人隊の隊長ロベゴと部下の四人は下半身の服に火が付いて燃え上がって地面を転げ回っていた。
「あちっ、あちっ」
「焼けている!マジで焼けている」
「助けて、助けて」
「水!水を!」
「足が、足が痛い!」
コロンは首を、かしげて言った。
「……あれ、おかしいな……こんな動きをすると思っていなかったの」
スカイは逃げながらコロンの火炎魔法を見ていた。
ひでぇよコロン。ロザ姉ちゃんが見たら物凄く怒るぞ。
マグギャランは、剣で奮戦していた。
五人の山賊達から逃げながら、時々、振り返って、反撃の攻撃をしていた。
突然大声をマグギャランは上げた。
「見切ったわ!貴様がリーダーだな!」
マグギャランは剣の突きを、剣を持った山賊の心臓に打ち込んだ。
そして素早く、剣を、山賊の身体から引き抜いた。
途端に槍を持った山賊二人と、戦斧を持った山賊二人の動きが悪くなった。
マグギャランは言った。
「ふはははははははは!今日の俺は絶好調!」
そして、剣で二本の槍の首を立て続けに切り落とした。
その時点でマグギャランは反撃に転じた。
マグギャランの剣が、戦斧持ちの二人と、穂先を失った槍持ちの二人の心臓に次々と突き刺さっていった。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は両手の剣で、二本の槍の攻撃を受けていた。
そして両側面から、戦斧持ちの二人が、雄叫びを上げて突進してきた。
「うおおおおおおおおおおおお」
その戦斧持ち二人の首に、宙を飛んできた刃が突き刺さった。戦斧持ちの二人は倒れた。
ラメゲの4枚刃剣から撃ち出された刃だった。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は、怯んだ、残りの三人を両手の剣で一気に切り伏せた。
コロンは目に見えて狼狽えていた。
コロンは言った。
「……スカイ。どうしよう。あの五人は燃えて死んじゃうよ……」
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道