死闘のツルッペリン街道
「もう少し、落ち着いてから、行った方が安全だよ。ここだけの話し。ヒマージ王国は、暴走山賊団「闇の腕」と、まともに戦う気が無いらしいんだよ。ヒマージ王国が送り込んだ軍隊は、たった二万人だったんだ。そして散々負けたって話しだ。「クメーヌの街」は負傷兵を収容したから判っているんだよ」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は
言った。
「ヒマージ王国は、「バラント伯爵領」と周辺の諸侯を見捨てるつもりかい。暴走山賊団「闇の腕」は略奪はするわ、女は奴隷にするわ、やりたい放題やっているという話しだ」
警邏隊の女隊長ドーマは言った。
「ヒギア、あんたが行っても、出来る事は無いはずだよ」
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「とにかく、あたしは、せっかちだからね、
スワートル村の安否を確かめたいんだよ。さあ、通してくれ」
警邏隊の女隊長ドーマは言った。
「死ぬんじゃ無いよヒギア」
警邏隊の女隊長ドーマは封鎖を解除した。
道案内の「二刀剣のヒギア・ゼギンズ」は言った。
「ああ、大丈夫さ。強い助っ人達が居るからね」
スカイ達三人と、バゲットとラバナ、ラメゲとルシルス、ヒギア・ゼギンズの乗った五頭の馬は、半月が昇った、月明かりの中、ツルッペリン街道を西へと走った。
ブリリディ・ブリリアントは、到着した、傭兵団を四頭立ての馬車の窓から見ていた。
20名全員が、犬の形をしたフルフェイスの兜を被って居る。全員、手にはランスを持っている。
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「オマエ達が、ランダーが用意した傭兵団「ベルゲンの死の猟犬騎兵団」か」
隊長らしい男が言った。
「そうである。我々は「ベルゲンの死の猟犬騎兵団」だ。私は七の猟犬隊隊長ビーセルである」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「ベルゲンとは、どこだ、聞いた事が無いな」
ビーセル隊長は言った。
「我々はイシサ聖王国に滅ぼされたベルゲン王国の直系の騎兵団だ。雇い主の命と、あれば何でもする命知らずの傭兵団だ」
ブリリディ・ブリリアントは言った。
「何でもするのか、人殺しでもか」
ビーゼル隊長は言った。
「当然である。我々は、獰猛(どうもう)な猟犬なので在る。雇い主の命と在れば人殺しでも、略奪でも虐殺でも何でも、するのである。暴走山賊団「闇の腕」など、所詮は、山賊である。我等「ベルゲンの死の猟犬騎兵団」の獰猛なランスの前に串刺しにして殺すのである」
ブリリディ・ブリリアントは笑みを浮かべて言った。
「期待して良いかな?」
ビーゼル隊長は言った。
「我々は命じられた事を実行するのみである」
青ゾリ兄弟のゴドルは、ギーンと一緒に、ツルッペリン街道で馬を休める為に止めた。
ゴドルは言った。
「ギーン、このツルッペリン街道をバゲットとラバナ達は通るはずだ。他のツルッペリン街道を通ろうとすれば、時間が掛かりすぎる」
ギーンは言った。
「兄者、俺達は、バゲットとラバナから「手形」を奪う事が出来るのだろうか」
ゴドルは言った。
「ああ、なんとしても成功報酬二百ネッカー(2000万円)を手に入れなければならない」
ギーンは言った。
「兄者、俺達兄弟の妹のドナは、生まれつき虚弱体質だ。俺達兄弟が離れても生きていけるのだろうか。今、どうして、いるのだろうか」
ゴドルは言った。
「大丈夫だ、二百ネッカー(2000万円
)が手に入れば、錬金術の秘薬を飲ませる事が出来る。そうすればドナの虚弱体質を治す事ができるかもしれない」
ギーンは言った。
「だが兄者。この先には、暴走山賊団「闇の腕」が勢力を伸ばしている。俺達兄弟は、生き延びる事が出来るのだろうか」
ゴドルは言った。
「俺達の兄弟愛で生存するんだギーン。そして、ドナの虚弱体質を治すんだ」
ギーンは涙を流しながら言った。
「兄者!」
ゴドルも涙を流しながら言った。
「ギーン、やるぞ!」
ヒゲン・デパーロ達「ウォリア殺投術ヒゲン道場」の五人は天蓋の付いていない馬車に乗っていた。
赤唐辛子のガラシはガタガタとツルッペリン街道を走る馬車の荷台で竹刀を持ちながらラム酒「アホルディ」の瓶を飲みしながら言った。
「へへっ、ブリリディ・ブリリアントや他のヤツラは何も知らねぇようだな」
ドンケツのヒゲンはガラシから、回し飲みしているラム酒「アホルディ」の瓶を受け取って飲むと言った。
「まあな、俺達「ウォリア殺投術ヒゲン道場」に、暴走山賊団「闇の腕」と、繋がりが、ある事は、お天道様だって知るめぇよ。「ウォリア殺投術ヒゲン道場」の弟子が、暴走山賊団「闇の腕」の幹部会「五本指」の一人「投げ殺しのサナール」で在る事をよ」
武器屋のバンダはヒゲンから受け取ったラム酒「アホルディ」の瓶を一口飲むと言った。
「サナールのヤツは悪いガキだったよ。大人になったら、もっと悪いチンピラ以下の暴走山賊団「闇の腕」の幹部になりやがった」
ゴイスのカンオはラム酒「アホルディ」の瓶を受け取って飲みながら言った。
「アイ、アイサー。俺達「ウォリア殺投術、ウドル道場」の門下生「投げ殺しのサナール」の出世に乾杯だ、アイ・アイサー」
火炎殺法のギラーリは、魔法都市エターナルのマントを羽織ったまま、無言で御者台に座り、馬車を早足で走らせていた。ツルッペリン街道を西へ。
タリマ達「可憐暗殺隊」は、馬に乗っていた。ツルッペリン街道の西へ封鎖されている門を避けて、「クメーヌの街」の城壁伝いの側道から、ツルッペリン街道に出た。
殺人雨傘のエプトナは言った。
「タリマ、どうやら、スカイ・ザ・ワイドハート達三人は、このツルッペリン街道を西へ向かうようね」
キラー・リボンのタリマは言った。
「そうね」
殺人雨傘のエプトナは言った。
「わたしは、あなたを許さないからね。タリマ、あなたは、プロの暗殺者なのに、悲鳴を上げて、多くの人を起こしてしまったのよ。それが失敗の原因よ。私とミルカラはスカイ・ザ・ワイドハートを仕留める事は出来たはず」
毒針空気銃のルマナは言った。
「あれは、騎士マグギャランがエロイからいけないんだよ」
七徳剣のミルカラは言った。
「なにがエロイの」
毒針空気銃のルマナは言った。
「だって、騎士マグギャランは、タリマをナンパしようとしたんだよ。命を狙われているのに。あいつ、すっごいエロイんだよ」
キラー・リボンのタリマは言った。
「私が二十歳って知った途端に、愛を語ろうとか、真人間に更生させるとか言っているのよ」
殺人雨傘のエプトナは鼻で笑った。
「バカな男ね、私達バタンの暗殺者は、真人間になんか更生できないのに。生まれた時から、バタンの暗殺者として生きるしか道は無いのだから」
七徳剣のミルカラは言った。
「結構ロマンチックな、人なんじゃ無いの、私達の様な生まれつきの暗殺者を更生させようなんて」
毒針空気銃のルマナは言った。
「違うよミルカラ。絶対、あのエロ騎士は下半身でしか考えていないよ」
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道