死闘のツルッペリン街道
ブリリディ・ブリリアントはミンクの携帯電話で暗殺者ギルドを呼び出した。
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「どういうことだ、まだ、三人の冒険屋達は始末していないのか」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「どうやら、手違いが在ったようでげすね。
暗殺者ギルドの暗殺者は、殺すか殺されるかの二つしかないんでげすよ」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「それならば「可憐暗殺隊」は全滅したのか」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「そうではないのでげすがね。しばし、時間が掛かるようでげすな」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「私は時間の速さを重んじるのだよ。暗殺者ギルドの暗殺者は仕事が速いと思っていたが。とんだ期待はずれだ」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「まあ、待ってくださいでげす」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「早く、三人の冒険屋を始末しろ」
携帯電話を切った。そして次に執事のランダーに携帯電話を掛けた。
「私だランダー」
執事のランダーは携帯電話の向こうで言った。
「旦那様、何でしょうか」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話の向こうに言った。
「暗殺者ギルドの暗殺者達は役に立たなかった。予想していたよりもバゲット達が雇った冒険屋が強かったようだ」
執事のランダーは携帯電話の向こうで言った。
「暗殺者ギルドに手を出したら身の破滅ですよ。必ず、暗殺者ギルドは後で手を出してくるはずです」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「冒険屋三人すら、始末できなかった暗殺者ギルドだ、恐れる事はないだろう」
執事のランダーは携帯電話の向こうで言った。
「旦那様。今居る場所は、どこですか」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「クメーヌの街だ」
執事のランダーは携帯電話の向こうで言った。
「旦那様、テレビや新聞を見ていないのですか」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「お前達が寄越すFAXのデータしか見ていない」
執事のランダーは携帯電話の向こうで言った。
「今、旦那様が居る、クメーヌの街の先のバラントの街ではツルッペリン街道の封鎖が行われています…」
翌日スカイ達とバゲットとラバナ、ラメゲとルシルスと一緒にフラクター選帝国製のエア・バスで、クメーヌの街を目指した。
クメーヌの街に着くと、鎧を着込んだ街道警邏隊の男性がエア・バスの車内に入ってきた。
「このクメーヌの街の先のバラントの街では現在、ツルッペリン街道の道路封鎖が行われています」
車内で商売をしている様な格好の連中達が一斉に不満の声を出した。
バゲットも不満の声を出した。
バゲットは言った。
「どういうことだ。我々は、バラントの街経由で、「懐かしのウタタ」まで行かねばならない」
警邏隊の男性は言った。
「テレビや新聞を見れば判ると思いますが。今、バラントの街の先では暴走山賊団「闇の腕」が、暴れ回っているんですよ。ヒマージ王国の軍隊が出動して戦って居るんです。ダンジョニアン男爵の迷宮競技で、捕まっていた暴走山賊団「闇の腕」のリーダー、バーリ・ゾーダが殺された事に対する「血の報復」が行われているのです」
バゲットは言った。
「何だ、その「血の報復」というのは」
ラバナは言った。
「そうよ説明しなさい」
警邏隊の隊長は言った。
「つまり、今、バーリ・ゾーダが殺された事で、副団長のリッヒル・メラーニが「闇の腕」の団長になって、ヒマージ王国の村や町を襲撃して略奪しているのですよ。それでヒマージ王国の軍隊が出動する騒ぎになっているんですが。ヒマージ王国の軍隊も、今、「闇の腕」に負け続けているんですよ」
バゲットは言った。
「たかが、山賊団だろう」
ラバナは言った。
「そうよ山賊団よ」
警邏隊の隊長は言った。
「たかが、山賊団、されども山賊団です。
大体「五万人」もの山賊が居る山賊団が、たかがと呼べる山賊団と、お思いですか?しかも全員武装しているわけですよ」
バゲットは狼狽えた声で言った。
「それは不味いな」
ラバナも狼狽えた声で言った。
「そうよ不味いのよ」
警邏隊の隊長は言った。
「安全を考えたら、この「クメーヌの街」の先の「バラントの街」には行かない事です。暴走山賊団「闇の腕」は、バラントの街を襲撃する可能性が高いのです。それでは、皆さん、くれぐれも「バラントの街」には行かないでください。封鎖が解けるまで危険です」
スカイは言った。
「足止めか」
マグギャランは言った。
「ふむ、どうするかだ」
バゲットは言った。
「時間が惜しい。バラントの街へ行く、フラクター選帝国製のエア・バスは走っているのだろう」
ラバナは言った。
「父さん、五万人の山賊は、まずいよ」
バゲットは言った。
「だが期日までに「手形」を届けなければならない」
スカイは言った。
「おい、ルシルス。バーリ・ゾーダーは、お前が参加していた「悪人同盟」の一人だよ。なんか知っていないか?」
ルシルスは白い秘文字教の神官着の袖で口元を隠しながら言った。
「悪い子の方の、わたしが関わっていたのでしょうか?良い子の方の、わたしは知りません」
ラメゲは言った。
「そう言うことだ。さすがに五万人の山賊の相手は厳しいな。大将首を取る事は出来るが」
バゲットは言った。
「一度、宿屋に入って、テレビや新聞を見て対策を練ろう」
スカイは言った。
「暇つぶしに市場でも通っていくか」
マグギャランは言った。
「泊まる場所は冒険屋組合加盟の宿屋「シャコー」だ。もらった街路図を見ると市場経由で行く事になるな。俺達も市場を通るのは悪くない」
カナリス・モンドマーネーは、付け髭とヅラを付けて町人に変装した。
そして男優のアギド・モールズは、ヒマージ王国の官吏の服を着て変装した。
そして、「小人の肝臓殺し」を売っている、小人族の屋台に行った。
アギド・モールズは、小人族に言った。
「ちょっと、店の営業許可について、二、三の質問がある」
小人族は露骨に迷惑そうな顔をして言った。
「あんた、新顔の役人だね。こちとら、ちゃんと真面目に、営業許可とって、商売しているんだよ」
アギド・モールズは、言った。
「いや、一度、私と一緒に、役所に来てくれ、書類の不備があった。君の不備か、行政の不備か、確認しなければならない」
小人族は迷惑なそうな顔をしたまま、店の売上金らしいカネ袋を持ってアギド・モールズが変装したニセ官吏に付いていった。
カナリス・モンドマーネーは、小人族がアギド・モールズのニセ官吏と一緒に行くのを見計らった。
カナリス・モンドマーネーは、木の板で作った即席の看板を立てた。看板には、こう書かれていた「子供が飲んでもいい、お酒」。
スカイ達は宿屋「シャコー」を目指してクメーヌの街の市場を通っていった。
コロンが立ち止まった。
スカイは言った。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道