死闘のツルッペリン街道
夜の十一時を過ぎた。タリマ達「可憐暗殺隊」は、三人の冒険屋達が泊まっている宿屋「カーユー」の前に来た。「呼び出しのゲアン」の曾孫「導きのジャネン」が宿屋「カーユー」まで連れてきた。「導きのジャネン」は、まだ八歳の男の子だが、全身にタトゥーとボディ・ピアスをしていた。
ジャネンは言った。
「タリマ、エプトナ、ミルカラ、ルマナ、さあ、殺してこい」
タリマは言った。
「判った。行くよ、みんな」
タリマ達は予定通り、宿屋、「カーユー」の裏口に立った。裏口の扉を手先の器用な「毒針空気銃のルマナ」が、針金で開けた。
そしてタリマ達四人は宿屋「カーユー」の中に入っていった。
そして音を立てずに階段を上っていった。
スカイは、バゲットとラバナが眠っている部屋の前で見張りをしていた。ラメゲは、ルシルスとコロンが眠っている部屋の前で十本剣を抱えていた。退屈で眠気が押し寄せてきた。缶コーヒー「ビッグ・ダイアモンド・マウンテン」を一本飲んだだけでは眠気が取り切れなかったようだった。
スカイは、うつら、うつらと、まどろんでいた。
階段が軋む音がスカイの耳に聞こえた。
スカイは目が覚めた。
スカイは言った。
「誰だよ」
ラメゲも十本剣から「バタン暗殺流剣術の四枚刃剣」を抜いて、階段の方へ向けた。
ラメゲは言った。
「誰だ、ルシルス様に手を出しに来たら叩き斬る」
タリマは動揺していた。
暗殺のターゲットのスカイ・ザ・ワイドハートの他にも剣士が居たのだ。
タリマは言った。
「ルマナ、毒針空気銃で撃って」
階段から「毒針空気銃のルマナ」が、毒針空気銃をスカイ・ザ・ワイドハート目がけて撃った。
だが、その毒針は、空中を飛んできた刃によって、弾かれた。そして空中を飛んできた刃は、階段の壁に突き刺さった。
スカイは、「バタン暗殺流剣術の四枚刃剣」が飛んでいって、壁に突き刺さるのを見た。
ラメゲは言った。
「スカイ、気をつけろ。その女は「毒針空気銃」を使う。今、お前は、毒針空気銃で撃たれた」
スカイは言った。
「おう、暗いから判らなかったぜ」
ラメゲは言った。
「毒針空気銃の毒針はかなり小さい。その毒針は、ダンジョニアン男爵の迷宮競技のダンジョン・ストーカー「ポイズン・ガン」が使う物と同じだ。オレは、ダンジョン・ストーカーズとして雇われていたから、知っている」
突然、ルマナが泣き出した。
そして三連「毒針空気銃」を落とした。
「まさか、あなたは、ダンジョン・ストーカーズの一員の「ラメゲ・ボルコ」さんですか。私の父親は、ダンジョン・ストーカーズのポイズン・ガンです」
ラメゲは言った。
「まさか、お前は、ポイズン・ガンの旦那が言っていた、親権を失った五人の子供の一人なのか」
ルマナは言った。
「お父さんは、手紙で、ボルコさんには、随分と良くしてもらっていると書いていました。お父さんがキュピン・パーキスというスロプ王国人の女に殺されたとシキールさんが言っていましたが、どんな最後をだったのでしょうか」
タリマは、仕事を続けるために言った。
「ルマナ、今は仕事中よ。それに、なんで、ダンジョン・ストーカーズが、ここに居るの」
ラメゲ・ボルコはタリマに言った。
「オレは恩人の娘の警護をしている。もしかして、オマエ達はバゲットとラバナを狙っているのか?」
タリマは言った。
「違います。私達が狙っているのは、スカイ・ザ・ワイドハートとマグギャラン、コロナ・プロミネンスです」
ラメゲ・ボルコは言った。
「それなら、オレは、ポイズン・ガンの旦那の娘に話しをしなければならない。オレは、ポイズン・ガンの旦那に頼まれている事があるんだ。スカイ、後は自分で戦え。お前達三人の戦いだ」
スカイは言った。
「ちっ、しょうがねえな。マグギャラン起きろ!」
だが、マグギャランとスカイの部屋からは声が帰ってこなかった。
スカイは大声で言った。
「マグギャラン、裸の美女が居るぞ」
とたんにガタガタと音がして、扉が開き、 剣を持ったマグギャランが扉を開けて出てきた。
マグギャランは言った。
「スカイ、裸の美女とは、いかなる物か」
スカイは言った。
「何だよ。美女は居るが刺客の美女だ」
スカイが階段の方を指すとマグギャランも見た。
マグギャランは言った。
「ふむ、どうもオレのストライク・ゾーンの二十歳から二十九歳までの美女は一人しか居ないようだな。あとは、みなガキだ」
スカイは言った。
「おい、オマエ等、この狭い廊下じゃ戦いにくいだろう。外へ出て戦うぞ」
マグギャランは言った。
「確かに夜に、わざわざ、美女の方から来てくれるとはナンパする手間が省ける」
タリマは言った。
「ルマナは戦うの」
ルマナは首を振った。
「ボルコさんに、お父さんの話しを聞く」
ルマナは「毒針空気銃」を持って、ラメゲ・ボルコの所まで走ってきた。
エプトナが「殺人雨傘」を持ったまま言った。
「ルマナ、そんな事が許されると思っているの」
ミルカラも「七徳剣」を持ったまま言った。
「そうよ、私達はバタンの暗殺者なのよ」
タリマは言った。
「ミルカラ、エプトナ、ルマナは、まだ子供だから見逃してあげて」
スカイは、バタンの暗殺者と聞いて納得した。
スカイは言った。
「マグギャラン、この四人の女達は暗殺者ギルドのバタンの一族だ」
マグギャランは言った。
「ほう、美女は美女でも危険な殺し屋の美女か」
赤い服の女が言った。
「私はタリマ、人呼んで「キラー・リボンのタリマ」
白いフリルの服の雨傘女が言った。
「私はエプトナ、人呼んで「殺人雨傘のエプトナ」」
背が百八十?ぐらい在る、青いメイド服の女が金属の塊のような重そうな武器を抱えながら言った。
「私はミルカラ、人呼んで「七徳剣のミルカラ」」
スカイは腰の剣を抜いた。
手に馴染む感じがした。
確かに良い剣のようだった。
赤い服の「キラー・リボンのタリマ」が、腰から束ねたリボンの様な物を取り出した。
マグギャランは言った。
「リーダーらしい、赤い服の殺し屋はオレに任せろ。お前は、雨傘と変則凶器使いのガキ共を相手していろ」
スカイは言った。
「何だよ、何時ものユニコーン流は、どうしたんだよ」
マグギャランは言った。
「うるさいスカイ。オレの剣は、少し訳ありなのだ」
スカイは言った。
「判ったよ。そんじゃ「殺人雨傘のエプトナ」と「七徳凶器のミルカラ」オレが相手するよ」
白いフリルの服の眼鏡にポニーテールの女「殺人雨傘のエプトナ」が言った。
「私達二人に勝てるつもり?」
青い服に黒いショートカットの女「七徳剣のミルカラ」は言った。
「私達はプロの殺し屋よ」
スカイは言った。
「勝つつもりも無いが、負けるつもりも無いさ。外で勝負だ」
スカイは、窓から、食堂の在る屋根に飛び降りた。
エプトナとミルカラも、窓から屋根に飛び降りた。
スカイと、「殺人雨傘のエプトナ」と「七徳剣のミルカラ」は屋根の上で対峙した」
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道