死闘のツルッペリン街道
「次は騎士マグギャランと、魔法使い見習いコロナ・プロミネンスの弱点を探さないとダメですね」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「しっかり観察するんだよメロア。この定期市は、あらゆる人間の欲しい物が並んで居る。騎士マグギャランと、魔法使い見習いコロナ・プロミネンスの弱点となる物が売っているはずだ」
メロア・ソペラは小声で言った。
「騎士マグギャランは若い女性ばかり見ています」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「騎士・マグギャランは「女」が弱点だ。演目「美女救出大作戦」を上演しよう」
男優アギド・モールズはカナリス・モンドマーネーに言った。
「団長、魔法使い見習いコロナ・プロミネンスは、「酒」の屋台ばかりを見ています」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「そうか、「酒」が弱点か」
男優アギド・モールズは言った。
「どう見ても未成年ですよ」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「いや、騙すのは簡単だ。演目「子供が飲んでも良い、お酒」を上演しよう」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「最後は、ラバナ・バゲットの弱点を調べる必要がある。だが、未だに何が弱点か判らないな」
女優ラーナ・マピルは言った。
「団長ラバナ・バゲットが動き出しました」
ラバナはフラフラと、露天に向かっていった。
そこには、フラクター選帝国ヤマト領で作られた同人誌を売っていた。
女優ラーナ・マピルは言った。
「ラバナ・バゲットは「やおい」です。「やおい」が弱点です」
カナリス・モンドマーネーは言った。
「よし、演目「男同士の愛」を上演しよう」
ブリディ・ブリリアントは執事のランダーか用意したFAXを確認した。
ミドルン王国の冒険屋組合に登録している三人の冒険者達のプロフィールを見た。
なかなかバゲットとラバナが捕まらず、二十万ネッカー(200億円)の価値の在る「手形」が手に入らない事に苛立っていた。
悪漢の「青ゾリ兄弟」達は、アッセブルの街の先、クメーヌの街に先行していた。
格闘家の「ウォリア殺投術ヒゲン道場」の五人組は、更に先のバラントの街に先行して待ち伏せを企んでいた。
ブリリディ・ブリリアントは苛立っていた。
この雇った、ならず者達はスピードが、いかに重要だか判っていないのだ。
詐欺師の四人組「モンドマーネー劇団」は、やる気があるのか無いのか判らなかった。
ブリディ・ブリリアントは最後の手段を、とる事を決意した。
そして携帯電話を掛けた。
それは、禁断の領域。コモン人は知っていても、聞いてもイケナイ、禁断の領域。
人殺しを請け負う殺し屋達の同業者組合、暗殺者ギルドだった。
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「暗殺者ギルドかね」
携帯電話の向こうで年寄りの男の声がした。
「へへへっ、その通りでげす。誰か殺したいほど憎んでいる。ヤツが、おりますんでげすかい?」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「ああ、居る。ブレッダー・バゲットが雇った冒険屋三名だ」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「冒険屋を殺して欲しいんでげすか」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「三人の名前は、スカイ・ザ・ワイドハート、マグギャラン、コロナ・プロミネンスだ」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「ご予算は幾らぐらいでげすか」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「暗殺者ギルドを利用するのは初めてだ、相場を知らない」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「冒険屋組合のデータを今調べましたでげすよ、この三人は低レベルなパーティーでげす。暗殺の相場は一人につき、十五ネッカー(150万円)。合計で四十五ネッカー(450万円)でげす」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「人殺しの相場とは、こんなにも安い物なのか」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「この三人の相手なら、暗殺者ギルドの駆け出しの殺し屋達でも良いげしょう「可憐暗殺隊」と言いますんでげす。雇いますでげすか」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「何人雇う事になるんだ。その分報酬が増えるのか」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「いえいえ、三人の冒険屋の命は、合計四十五ネッカー(450万円)は変わりませんでげす。あなたが、お支払いするのは四十五ネッカー(450万円)で変わりませんでげす」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「いつから仕事を開始する」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「あなたが四十五ネッカー(450万円)を支払った時点からでげす」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「早く、取りかかってくれ、私は時間に厳しい男なんだ」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「「可憐暗殺隊」はアッセブルの街に居るんでげすよ。今夜にでも、三人の冒険屋達を殺す事は可能でげす」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「それでは、これから、フラクター選帝国銀行の暗殺者ギルドの口座に入金する」
暗殺者ギルドの年寄りの男は携帯電話の向こうで言った。
「出来るだけ早く振り込んでくださいでげす。暗殺者ギルドも早いカネが好きなんでげす」
ブリリディ・ブリリアントはミンクの毛皮の携帯電話を操作し、執事のランダーを呼び出した。
「フラクター選帝国帝国銀行の暗殺者ギルドの口座に四十五ネッカー(450万円)振り込んでくれ」
執事のランダーは携帯電話の向こうで驚いた声を出した。
「まさか、旦那様、暗殺者ギルドに手を出したのですか」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「そうだ、私の決定に文句があるのか」
執事のランダーは携帯電話の向こうで言った。
「あります。一旦、暗殺者ギルドに手を出すと、一生ゆすり取られますよ。暗殺者ギルドは犯罪者達よりもタチの悪い殺し屋達の集まりです」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「だが、バゲットは、冒険屋の三人組を雇った。対抗するには、暗殺者ギルドしかないだろう」
執事のランダーは携帯電話の向こうで言った。
「私は、暗殺者ギルドに手を出す、旦那様にはついて行けません。別の冒険屋のパーティーを雇えば良かったんですよ」
ブリリディ・ブリリアントは携帯電話に言った。
「もう既に、契約は成立した、早く、暗殺者ギルドの口座に入金しろ。今すぐにだ」
執事のランダーは携帯電話の向こうで言った。
「旦那様、後で必ず後悔する事になりますよ」
そして、携帯電話は切れた。
ブリリディ・ブリリアントは、執事のランダーを解雇する事を考えていた。暗殺者ギルドの方が話しの通りはいい。
何よりも時間を無駄にしないのが良かった。
ブリリディ・ブリリアントは、バゲット商会を乗っ取った後、次は、どこの商会を乗っ取るか考えていた。
作品名:死闘のツルッペリン街道 作家名:針屋忠道