カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅵ
一面の青が、諭すように煌めく。
彼を好きになっては、いけない
彼に想われたいと、望んでは、いけない
美紗は、突き刺すような青い光の中で、立ち尽くした。もう好きになってしまった。好きになって、半年以上も過ぎてしまった。
せめて、今のままで、いたい
それが正直な気持ちだった。都合のいい、身勝手な思い。
心の中で想うだけにするから
決して想いを伝えたりしないから
今のままでいることを、許してください
一面の青は、美紗の願いには沈黙し、ただ問い返すように、冷たく光る。
心の中で想うだけ、決して伝えずに想うだけ
貴女にそれができるのか
美紗は、唇を強く噛んで、自分を取り囲むように広がる青い光を見つめた。
できない、わけにはいかない
あの人の傍にいるために、絶対に気持ちは伝えない
音もなく降り続く雨の中で、青と紺の合間の色に彩られたイルミネーションは、美紗の決意を試すかのように、いつまでも美しく煌めいていた。
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作品名:カクテルの紡ぐ恋歌(うた)Ⅵ 作家名:弦巻 耀