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からっ風と、繭の郷の子守唄 131話から135話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(133)
「荒地の果てに見えるのは、土に生きる男たちの夢」

 『康平~、康平~』と呼ぶ声が、遠くから聞こえてくる。
枯れ草をかき分けながら歩く五六の耳に、康平を呼ぶ女の声が聞こえてきた。
(気のせいかな・・・・さっきから女が、康平を呼んでいるように聞こえるぞ)
本格的な伐採の作業にそなえ、下調べに来ている真っ最中だ。
康平も、風に混じって聞こえてくる、自分を呼ぶ女の声に立ち止まる。
耳を澄ませる。

 「美和子の声のようにも聞こえる。でも、そんなはずがない。
 あいつは行方不明のままだ。
 だいいち身重の女が、こんな荒れ地に現れるはずがない」


 「そうだよな。でも、康平。
 たしかに俺の耳にも聞こえたぜ。誰か来たんじゃないか、そこの道まで」

 伸び放題の桑の木と、枯れたツルが絡まっているここからでは、
見通しがまったく利かない。
荒れ放題の桑園は、立ち入ってきた者の視界を遮るどころか、
身動きすらままならない。
『おう。わしにも聞こえたぞ』茂みの中から徳次郎老人が、
ニョキッと顔を出す。