からっ風と、繭の郷の子守唄 131話から135話
からっ風と、繭の郷の子守唄(132)
「仲人として現れた男2人に、さすがに笑うしかなかったと語る母」
『何とかしておくれっ』てあんたのために、仲人が2人やってきた、
と千佳子が笑う。
「仲人といえば、夫婦ものか、ひと組の男女が努めるものだ。
だけど、あんたの場合は異常だった。
男2人が、私の目の前に現れた。
誰だと思う?。康平の師匠の俊彦さんと、極道の岡本さんだ。
話を聞いて、驚いたね・・・・」と、またまた千佳子が笑う。
「大の男がふたり揃って、畳に頭をこすりつけ、あたしに迫るんだ。
離婚するまでのなりゆきを、事細かに全部聞かされました。
赤い車に乗っている女の子が、あんたのために、ひと仕事したことも
知りました。
康平が、岡本さんのところへ相談に押しかけたそうだ。
ボコボコになって帰ってきたのは、そういう事情があったと、
岡本さんから聞かされた。
周りの人たちが、あんたのために必死に奔走したんだ。
親の私が、放っておくわけにいかないだろう。
嫁に来いとは言わない。
でも針のムシロの実家へ帰るよりは、多少は居心地がいいだろう。
あとのことは、2人で相談すればいいことだ。
赤ん坊が生まれるまで、自分の家だと思ってのんびりするがいい。
康平は、あの通りの不器用者だ。
あんな男でよければ、面倒を見てやっておくれよ」
「でも、お母さん。私は不都合が多すぎる女です。
好意に甘えたら、あとでお母さんにご迷惑をおかけしてしまいます」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 131話から135話 作家名:落合順平