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からっ風と、繭の郷の子守唄 131話から135話

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 「千佳子というもと暴走族で、康平のお母さんをしている人。
 温泉から帰ったら、まっすぐ連れてきてくださいと頼まれました。
 あなたの身体と、お腹の赤ん坊を、まとめて引き受けてくださるそうです。
 あなたを引取るため、まもなくここへやって来ます」


 「突然すぎる話で、気持ちが動転してきたわ。
 だいいち康平と、なんの話もしていません。約束もしていないもの。
 離婚だって、成立したばかりです。
 あと2ヶ月でこの子も生まれてくるのよ。何がなんだかわかりません。
 いきなり康平のお母さんと行き会うなんて、どうすればいいの、
 あたしは・・・・」


 「まもなくお母さんになるんでしょ。いちいち狼狽えていてどうすんの。
 向こうだって、一人しか産んでいない母親だ。
 美和子だってこれからまもなく、一人を産んで母親になる。
 数字的には互角の勝負だ。
 ジタバタしないでしっかり覚悟を決めなさい。
 悪くない話に、きっとなるはずです・・・・うふふふ」


 「なに訳のわかんないことを言ってんの、貞ちゃん。
 そういう問題ではないでしょう。
 あ、あら、あの車かしら。あのハイブリッドの白い車?」


 反対車線に、ゆっくり白いハイブリッド・カーがあらわれる。
運転席から現れた千佳子が、貞園へ手を振る。
そのまま車道を横切り、助手席へ近づいてくる。
『来ました、噂の千佳子が。覚悟をしっかり決めるのよ、あなたのお義母さんになる人ですから』
貞園が千佳子に応えて、軽く手を振り返す。


 「こんにちは。あなたが美和子ちゃんね。康平の母、千佳子です
 あら~まぁ、ずいぶん立派なお腹です。
 8ヶ月目に入ったと聞いていますが、順調ですか、お腹の赤ちゃんは?」


 「はい。おかげさまで順調です。
 あっ、はじめまして。美和子といいます。康平くんとは・・・・」


 「あなたのことは、よく知ってます。
 細かい話はあとにしましょう。慎重に助手席から降りてください。
 この車は低重心で快適ですが、乗り降りする際には、座席が低すぎて
 妊婦さんは大変です。
 手を貸してあげますから、ゆっくり足から出て、降りてください」


 「あ。はい・・・・」


 ドギマギしながら、美和子が助手席から外へ出る。
『ありがとう貞ちゃん。面倒かけましたね。また走りに行きましょう、これはいい車だもの』
千佳子が、運転席の貞園へ微笑みかける。


 「妊婦さんは温泉で、しっかり静養させてまいりました。
 念願の温泉旅行を堪能しましたので、あとは、元気で丈夫な赤ちゃんを
 産むだけです。
 また遊びに行きます。赤城山を最速で走るコツを教えてくださいね。
 じゃね、美和ちゃん。またあとでねぇ~、バイバイ~」