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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ぺんにゃん♪

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 しかも、カチューシャなどの作り物ではない、本物の耳だッ!
 パンダがほっぺを桜色に染めてニヤニヤした。
「いつ見てもミケ様のお耳は愛くるしくて、胸がときめいちゃう!(あ〜萌えるぅ)」
「ニヤニヤするなパン子。オレはそういう目で見られるのがキライなんだ」
 冷たい口調でミケは言い放ち、何事もなかったように立ち上がった。
 パン子と呼ばれた少女も立ち上がり、体をクネらすようにモジモジさせた。
「でもアタシ、ネコミミのミケ様がスキなの!(アタシにはこの人しかいないんだもん。ネコミミの人がこの世にいるなんて、絶対にアタシと結ばれる運命!)」
「……変な妄想してないだろうな?」
「モーソーは生きる糧なの、このサバイバル人生を生き抜くための知恵!(今日だって一杯のごはんをどうやって美味しく食べようとモーソーして、ミケ様のあんなお姿やこんなお姿を、さらには二人で【自主規制】を想像しながら、一粒一粒噛みしめて食べました!)……あれ、ミケ様お顔色がすぐれませんがどうかしました?」
「……いや、別に」
 おそらく、強烈すぎるパン子のモーソーが、ミケの脳内まで届いて汚染されそうになったのだろう。
 頭を抱えながらミケは遠く彼方を指さした。
「さっさと帰れ」
「ミケ様ひどい……そんな心にもないことを!」
「心にあるから言ってんだよ。人につきまとわれたりするのキライなんだよ」
 ストーカーがなにを言う?
「アタシはいつでもミケ様のお側にいますから!」
 こっちもストーカーだった。
「オレは人間そのものがキライなんだよ。この耳のせいでオレがどんな目に遭ってきたと思ってるんだよ!」
「それでもアタシは傍にいます!」
「口でならなんとでも言える。人は裏切るものなんだ」
「アタシは違います(だってアタシ無類のネコ好きだし)。ミケ様のことがスキでスキで、たとえ女装好きの変態だったとしても、それでもスキですから!(むしろ萌え要素、うふっ)」
「女装は好きでやってんじゃねーよ!(ただ、こっちのほうが落ち着くから)」
 ……だってさ♪
 なかなか意表を突く展開が繰り広げられている。ここで一度、キミたちは状況を整理してみるのがよかろう。物語は勝手に進ませてもらうがな!
 突然、パン子が部屋の中に飛び込んだ。そして、隠して持っていた油性ペンをペンギンの顔に突きつけようとしたのだ!
 ツンと鼻にくるペン先があと数ミリというところで、ミケがパン子の体を取り押さえていた。
「アホだろおまえ!」
「このペンギンさえいなければ、このペンギンさえ!」
 二人が暴れていると、ペンギンの中にいる少女が眠たそうな顔をして、お〜きなあくびをした。
「ふわぁ〜、よく寝た」
 そして、数秒の間を置いてから、その場にミケとパン子がいることに気づいたらしく、
「あ、おはようございます、山田さんに綾織(あやしき)さん」
 まずは人が自分の部屋にいることに驚かんかッ!
 ぼぉ〜けぇ〜っとするペンギンとは対照的に、パン子は感情を爆発させた。
「アンタなんか大ッキライなんだから!」
 と、いきなり叫んだかと思うと、大粒の涙を流しながらパン子は逃走してしまった。
 まるで嵐のような吹きっぱなし、ぶち壊しっぱなしだ。
「ほえ?」
 なにを言われたか理解してないように、ペンギンはきょとんとしていた。
 逃げる機会を完全に失ったミケは戸惑った。
 言い訳をしたほうがいいのか、それともあえて言い訳しないで、何事もなかったかのごとく立ち去るべきか。
「じゃ、オレ帰るから」
「はい、さよならぁ〜」
 あっさりとペンギンはミケの背中に手を振って、送り出すのかと思われたのだが。
「あ、ところでなんでヒナの部屋にいるのですか?」
 聞かれたくない質問ナンバー1(ワン)!
 このままスルーできるほどミケの度胸は据わってなかった。ゆっくりと振り返り、
「別にペン子には関係ないだろ」
 質問の答えになってない!
 ミケピーンチ!
 ストーカーしてたなんて口が裂けても言えない。
 しかし、ピンチはすぐに消えた。
「別になにもないならそれで納得です」
 えっ、納得しちゃうの?
 が、ペン子の話はまだ続くのだった。
「それよりも山田さんが泣いてましたけど、女の子を泣かせるのは良くないことだと思います。早く追いかけてあげてください」
「(オレのせい!?)別に泣かせとけばいいだろ、オレには関係ない」
 関係ない。それは人との距離を置く言葉。
 ペン子はミケに笑顔を投げかけた。
「泣いてるより笑ってるほうがいいに決まってます。みんなが笑顔になれたら、きっと世界は今よりずっとキラキラになると思うのです」
「笑顔の陰には絶対に泣いてるヤツがいるんだよ。理想は理想でしかない」
「そんなことないですよ。信じればきっと誰でも幸せになれるのです」
「…………(なれるわけないだろ)」
 正反対の主張は決してわかり合えない。ミケはそれをかたくなに信じ口をつぐんだ。
 ミケはペン子に背を向けた。心すらも背を向けた瞬間だった。
「気分が悪いから帰る」
 ベランダから出て行こうとするミケにペン子が、
「土足ですよ?」
 今さら!?
 てか、そこ!?
 しかし、やはりペン子には別に言いたいことがあった。
「気分が悪いなら休んでいきませんか?」
 天然!?
 ミケの言葉の意味を理解していないのだろうか。
 あえてミケはなにも言わず、無視して外に出ようとした。
 だが、その足がペン子の声によって止まった。
「ヒナは思うのです。ひとを癒せるぺんぎんになれたなぁって」
「……せいぜいがんばれよ」
「はい、がんばります!」
 ミケは皮肉のつもりだったが、元気よく返されてしまった。
 なんだかミケは心がモヤモヤする気分に陥った。
「(こいつのことがわからない。それが不安で仕方ない……でも)」
 ミケはうつむいたあと、静かに顔を上げて遠くの景色を――光ッ!?
 瞬時にミケはペン子を押し倒した。
「危ない!」
 ビビビビビビビ〜ッ!
 倒れた二人の真上を光線が掠め、壁には巨大な穴が開いた。
 ミケが叫ぶ。
「なんだよ今の!(光線銃? んなもんでなんで狙われなきゃいけないんだよ!?)」
 攻撃は外からだったが、第三者の気配はすでに部屋の中にあった。
 頭がでかくて体が細いシルエット。それはまるでよくテレビなんかで見る宇宙人の典型――グレイそっくりのシルエットだった。
 しかも!
 そのグレイ(仮称)は、手にスクール水着を持ってやがったッ!!
 ペン子が悲鳴をあげる。
「痴漢!」
 逃走するグレイ。ご丁寧にも玄関から逃走を図る。
 すぐさまミケはあとを追って寮を出た。
 そして、十メートルもしないところで力尽きた。
「ゼーハーゼーハーっ(ダメだ、体力がもたん)」
 すぐにペン子が追いついた。
「大丈夫ですか綾織さん?」
「オレにかまうなよ(生まれつき体力ねぇーんだよ)」
 すでにグレイの影も気配もない。逃げられたのか?
 ミケは腑に落ちなかった。
「たかがスク水を盗むためだけに光線銃なんか使うか?」
 たかがではなーい!
 マニアにとってはスク水とは神器に等しいことを知らんのか!