ぺんにゃん♪
そして決して振り返らずに逃げた。
多くのモノからミケは逃げた。
やがて寮の近くまで逃げ帰ってきた。
誰とも会いたくなかった。特に知り合いとは絶対に会いたくなかった。
しかし、その願いすらも裏切られた。
そこにはペン子がいた。
「どうしたのですか綾織さん!?」
傷つき薄汚れたミケを見て驚いたようだった。
すぐにペン子は近づいて来たが、ミケは残っている精一杯の力で押し飛ばした。
「来るなよ!」
「どうしたのですか?」
「心配したふりするなよ」
「ヒナは心から綾織さんのことを心配しています」
「良い子ぶりやがって。どうせおまえもオレのことを!(クソッ、なんでこいつの心だけ聞こえないんだ!!)」
心が聞こえることにより傷つき。
聞こえないことにより恐怖を覚える。
ミケはなにも信じられなくなっていた。
だから心にもないことを……
「おまえのこと嫌いなんだよ!」
世界が静まり返った。
悲しい顔をしたペン子の瞳から、一粒の涙が流れ頬を滑り墜ちた。
涙は地面で四散して消えた。
土砂降りの雨の音。
痛む胸。
ペン子はなにも言わず去っていった。
その姿が、あの泣きながら去っていった少女と重なった。
作品名:ぺんにゃん♪ 作家名:秋月あきら(秋月瑛)