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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ぺんにゃん♪

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 ここまで来たら……とか、これで最後だから……とか思ったら負けだ。
 ミケは負けなかった。
「帰る」
 引き止められる前にミケは急いでパン子の家をあとにした。
 が、玄関を出てすぐのところでポチと鉢合わせ!
 すぐあとを追ってきたパンダマンが誇らしげにポチの肩に手を回した。
「ウチの新しい仲間だ。どう見てもこの耳やしっぽ本物だろう? 地球じゃここしか見られない代物だぜ」
 最後の取って置きってこいつのことかーッ!
「なんでこんな場所にいるんだよポチ!」
「まさかこんな場所で出会うとはな、運命とは皮肉なものだなエロリック」
 無駄にカッコをつけるポチ。
「だからなんでこんな場所にいるんだって?」
「話せば長くなるが、この星に来るとき宇宙船が壊れてな。そのあと仲間とはぐれ、住む場所も頼る人もいなかった俺をバニーちゃんが救ってくれたんだ。どこかの国の猫どもと違って、本当にバニーちゃんは良い人だぞ」
「どこかの国とオレは関係ない」
 見知らぬ同族たちが住むニャー帝国。ポチの話だけを聞けば、あまり良い印象は持てないが、やはりピンと来ないのも事実。ポチを含めるワンコ族、ニャー帝国のニャース族、どちらにも言い分はあるだろう。
「でも、オレのこと殺(や)りたいんだろ?」
 ミケの真剣な眼差しがポチの心を射貫いた。
 ポチは大剣の柄に手を掛けたが、それ以上は動かなかった。
「(俺はなにを迷っている)」
「聞こえてるぞ?」
「うるさいエロリック!(〈サトリ〉を防ぐ特殊訓練を受けたが、そんなものほとんど役に立たない。だが悪あがきとも言うべき対処法ならある。そう、こうやって頭の中で物事を考え続けることだ)」
「そっちこそうるさいぞ」
 二人が対峙していると、ペン子がやってきた。
「あ、こんにちはポチさん」
「ああ、こんにちはペンギン(今日も素敵な笑顔だ、癒される。バニーちゃんとペンギンだけが、この辺境の地でのオアシスだ)」
 ハッとしてポチはミケに顔を向けた。するとミケは『聞こえてるぞ』と言わんばかりの顔をしていた。
 慌てるポチ。
「(落ち着け俺。暗黒公子と呼ばれるこの俺が、この環境に感化されているとでもいうのか。というのもエロリックに聞かれている。マズイ、ほかのことを考えるんだ。そうだ)たまには肉食いたいな(って声に出してどうする俺!?)」
 軌道修正できない慌てっぷりだった。
 パンダマンがガシッとポチの肩に腕を回した。
「わしも肉が喰いてーぜ」
 ミケがボソッと。
「アンタは笹でも喰ってろよ」
「笹なんざ人間様の喰いもんじゃねー! あんなもん喰うヤツの気が知れねーな」
「(パンダ全否定かアホオヤジ)」
 ここでミケもハッとした。
「(オレも感化されるんじゃないか。周りの変なヤツらに汚染されてる気がした)」
 急にミケは不機嫌そうな顔をしてこの場から早足で立ち去ろうとした。
 ところに立ちはだかる謎の影!
 今度はパンダマンではない、ひき逃げの常習犯ことベルだった。
「ここがウワサの不法占拠のウサギ小屋ねぇん。学園の敷地にこんな建物作られちゃ困るのよねぇん」
 学校の地下に変な部屋作ってる人の言えることか?
 不法占拠でボッタクリの山田どうぶつ園の首領(ドン)がベルに吹っかけようとしていた。
「ねーちゃん、入場料は五〇〇円だぜ!」
「入場料は絶対に払いたくないけど、代わりにコレもらってくれないかしらぁん?」
「もらえるもんならなんでももらうぜ、借金以外はなッ!」
 ベルは白衣のポケットから、抱えるほど大きな段ボール箱を取り出した。空間的に不可能な現象が起きたが、そこはあえて誰もつっこまない。
 パンダマンはなんの躊躇もなく段ボール箱を開けた。
 ガブッ。
 あ、なんか箱から出てきた動物にパンダマンの頭が丸呑みされた。
「ぎゃぁぁぁぁっ!(く、喰われる!)」
 てか、すでに喰われてる。
 パンダマンはどうにか頭を抜いて逃げ切った。
 そして、彼は見たのだ!
「パンダじゃねーか!」
 そう、パンダマンの頭に喰いついたのはパンダだった。
 パンダマンは頭からぴゅーぴゅー血を噴き、パンダと睨み合って一触即発だった。
「なんでパンダごときが人間様を喰おうとすんだ!」
 あんた本当はパンダそんなに好きじゃないだろ?
 この状況を作り出したベル、サラッと解説。
「パンダって雑食よ、だってクマだもの。まあ普通の環境じゃ笹ばっかり食べてるけど。あーちなみにこの子は、ただのパンダじゃないから」
 そりゃそうでしょうよ。あんたが連れて来たパンダですものね。
 で、どのようなパンダなんですか?
「実はこの子、パンダじゃなくてシロクマなのよね。遺伝子操作で色つけてみたんだけど、しょせんシロクマはシロクマっていうか、ついたの色だけじゃなくて極度の凶暴性とか、鋼鉄のかぎ爪とか、牙の間から毒液を出す能力とか……」
 とかとか言ってる間に、パンダマンは白目を剥いて地面の上で痙攣していた。
 まるで陸に打ち上げられた魚みたいにぴっちぴっちしている。
 そして、動かなくなった。
 パンダマーン!
 なんて誰も叫んでくれない。というか、パンダマンなど誰も眼中になかった。
 そんなことよりも今大事なことは!
「うんこ出そう」
 ベルは猛ダッシュでこの場から消えてしまった。
 残された偽パンダは目に入ったモノに襲いかかる。
 その視線の先にいたのは、ペン子だ!
 この偽パンダも運が悪い。最強の呼び声が高いペンギンバトルスーツに挑もうとは。返り討ちに遭うのは目に見えている。
 だが、ペン子は逃げた。
「シロクマクロさん乱暴は良くないと思います。みんな仲良くしましょう?」
 説得だった。
 そう、たとえこのきぐるみがどんな力を秘めていようと、ペン子がそれを使わなければ発揮されることはない。
 ペン子戦う意志なし!
 とにかく逃げ回るペン子だったが、急にその動きがスローモーションになったかと思うと・・・停止した。
「ペンギンスーツが動かなくなりました」
 ペン子ピーンチ!
 大剣を抜いたポチが地面を蹴って疾走する。
「今助けるぞペンギン!」
 偽パンダに振り下ろされる一撃。だが、その攻撃はいとも簡単に、鋼鉄のかぎ爪によって弾かれてしまった。
「このパンダ……できるッ!」
 ポチは柄を握り直した。
 すでに偽パンダは標的をポチに換えている。
 うぉぉぉぉん!
 威嚇するように偽パンダは立ち上がった。その全長はなんとポチの二倍。決してポチの身長が低いわけではない。ポチは一八〇センチ以上あるのだ。
 そんな偽パンダの頭めがけて、さらに高い位置から降ってくる人影。シャベルを振り上げたミケだった。体力はないがすごい跳躍力だ。
 ドゴッ!
 脳天クラッシュを喰らった偽パンダが目を回してピヨった。
 だが、むしろミケのほうが衝撃でシャベルを握った手を痛めていた。
「いってーっ! マジ折れた手首絶対折れた、マジ死ぬ!」
 手首を押さえながらのたうち回るミケ。
 偽パンダがミケに覆い被さろうとしていた。
「逃げろエロリック!」
 全速力でポチが走った。
 ドスン!
 偽パンダが倒れ地響きが鳴り響く。
 ――ミケは?
 ポチに抱きかかえられていた。