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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ぺんにゃん♪

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第5話「変態!山田どうぶつ園」


 ミャアミャアニャンニャー!
 休日の午前。
 ミケは公園のベンチでぼーっとしていた。
 あたりにはいつの間にかネコたちが集まってきてしまっていた。
「あ〜、またか」
 いつもこうだった。外でぼーっとしていると、飼い猫や野良猫が、次から次へと集まってくる。
 ネコたちはミケに甘えるように、頭を擦りつけてくる。
「(もしかしてこれも皇族の力とかなのか?)」
 際限なく集まってくるネコにミケが困っていると、そこにちょうどパン子が現れた。
「ミケ様ーッ! どうしたんですかこのネコちゃんたち?」
「別に(偶然またこの公園でパン子と……か。でもあの?少女?がパン子ってわけないよな)」
 あやふな過去の記憶。
 つい最近見た過去の夢。
 裸足の少女。
 あえてミケはそのことには触れなかった。
「どういうわけかネコがいつも寄ってくんだよ。野良猫も混ざってて、オレに媚びられても飼う気はないしな」
「だったらアタシが飼います! だって動物園の娘ですから!」
 安請け合いにしか聞こえなかった。
 ミケは疑いの眼差しでパン子を見ている。
「本当に動物園の娘なのかよ?(ってことは、あのパンダマンが園長ってことか? そもそもこいつんち相当な貧乏じゃないのか? 動物園なんてやってるわけないだろ)」
 そーゆーわけでミケは野良猫大行進をしながら、山田どうぶつ園に足を踏み入れることになったのだった。

「よく来たな、わしがこの山田どうぶつ園の首領(ドン)だ!」
 今日も首に巻いた赤いふんどしを靡かせ登場パンダマン。
 ミケは呆気にとられていた。
「ここ学校の裏庭だよな?」
 そう、パン子に連れられやってきたのは、トキワ学園の裏庭の一画だった。そんな場所に建てられた入場ゲートのアーチ。よく見るとアーチは段ボールで出来ていた。
 しかも、入場料五〇〇円の立て看板が。
 ミケは無視して入ろうとしたが、すぐさまパンダマンが立ちはだかった。
「五百円出しな」
「そんな金出せるかッ!」
「この動物園は貧乏人の来るとこじゃねーんだよ。金がないならさっさと帰りな」
「(貧乏人はおまえだろ)わかったよ、帰るよ」
 このままだとミケが帰ってしまう。慌ててパン子が割り込んだ。
「ちょっとお父さん、アタシの彼氏なんだからタダで入れてあげてよ!」
「それとこれとは別問題だ。白黒つけなきゃいけないのさ、パンダだけになッ!」
「ちょっとミケ様も帰ろうとしないでよ、アタシがどうにかするから!」
 必死なパン子はミケの袖をつかんで放さない。
 仕方なくミケは、
「わかったよ、パンダオヤジ。ここにいるネコたちを無料でこの動物園に提供してやる。これで入場料タダにしてくれないか?」
「よし乗った!」
 即決パンダマン。
 だが、この取引どう考えてもボッタクリだ!
 野良猫たちの問題も解決したし、ミケは園内に入ろうとせずに帰ろうとした。それに気づいて必死にパン子が止めた。
「ちょっとミケ様! せっかくだから中に入ってくださいよ!」
「……まいっか(別にヒマだしな)」
 アーチをくぐると、そこにはすぐウサギたちがいた。
 愛らしいことは違いないが、ウサギしかいない!
「詐欺だろコレ!」
 ミケは叫んだ。
 五〇〇円も払ってウサギを見せられるだけなんて、なんたる詐欺商法!
 しかもよく見ると、ウサギの柵はアイスの棒や割り箸……なぜか一本だけ混ざってる歯ブラシで作られていた。
 パンダマンはご丁寧に歯ブラシを指さして、
「ここがわしの自信作だ。この歯ブラシ、オサレだろ?」
 華麗にミケはシカトした。
 辺りを見回してみたが、やっぱりウサギ以外はいない。ほかにある物と言ったら、謎のボロ小屋だ。あの中にほかの動物がいるのだろうか?
 という淡い期待を抱いてみる。
 ミケはパン子と顔を見合わせる。
「あのさ、ウサギしかいないのか?」
「今はウサギしかいないけど、いつかはこの動物園でパンダを飼うことが夢なの!」
 壮大な夢だ。パン子にとっては壮大すぎる夢だ。
 さらにパンダマンまで入ってきた。
「だから我ら家族はパンダの格好をしているのだ!」
 しなくていいよ。
 ミケは回れ右をして帰ろうとした。
 だがパンダマンが立ちはだかる!
「待ちな小僧。追加料金で五百円払えば水族館も見られるぜ」
「水族館まで手広くやる気かよ(すでにこの町には水族館あるだろ、そこと張り合う気なのか?)。で、その水族館にはなにがいるんだよ?」
「まだ釣れてない」
「釣るのかよ」
「骨の展示ならいろいろあるぜ。あとヒトデ手裏剣コーナーや、ウニ(の空)玉入れコーナーも設置済みだ」
 やっぱりミケは帰ろうとした。
 だが、再びパンダマンが立ちはだかる!
「待ちな小僧。取って置きがまだあの小屋の中にあるんだぜ?」
 あのボロ小屋の中にいったいなにが?
 残念な結果は目に見えていたが、なにがあるのか気にならないわけではない。
 ミケはパンダマンに案内されて小屋の中に入ることにした。
「おっと、土足厳禁だぜ」
 便所サンダルを脱いで中に入っていくパンダマン。
 この時点でミケの不審はマックスだった。
 それでもここまで来てしまっては仕方がない。ミケは先を進んだ。
 パンダマンが叫ぶ。
「これが取って置きのパンダの展示だ! どうだ可愛いだろ!」
 まさか本物のパンダが!
 いるわけなかった。
 そこにいたのはパンダのきぐるみを着た五つ子ちゃん。パン子の弟たちだ。
 さらにパンダマンは台所を指さした。
「あんなのもいるぞ!」
 そこにいたのはバニーちゃんだった。若くて綺麗なバニーちゃんだが、
「アタシの母です」
 そう言ったパン子とそっくりだった。
 パンダマンに似なくて本当によかった。
 一通り家族紹介が終わったところで……って、ひとんちの家族見せられただけかッ!
 なんたるボッタクリ!!
 やっぱり失敗したと後悔しながら帰ろうとするミケ。
 だが、またまたパンダマンが立ちはだかった!
「待ちな小僧。まだ取って置きのヤツがいるんだぜ」
「もうお腹いっぱいだよ」
「デザートは別腹だぜ小僧。おーい、ちょっと来てくれるか?」
 少し遠くから、
「は〜い」
 と返事をしてやってきたのは、まん丸ボディの――ペン子だった。
 ミケは誓った。
「(もう絶対に騙されない)」
 こうしてミケは人間不信に陥ったのだった。
 パンダマンは誇らしげにペン子を紹介しようとしているが、もうすでに知っている。
「この娘(こ)が今日から山田水族館のアイドルを担当してもらうことになったペンギンだ」
 アイドルという言葉を聞き捨てならなかったパン子。
「山田どうぶつ園のアイドルのアタシと張り合うつもりなのね!」
 パン子は火花を散らすが、ペン子はのほほ〜んとしている。
「がんばってぺんぎんの布教活動をしたいと思います。よろしくお願いします」
 いつもの面々が集まっただけじゃないか。
 これで五〇〇円なんてやっぱりボッタクリだ。
 今度こそ、今度こそ絶対にミケは帰ろうとした。
 だが、しかし、再び、またまたパンダマンが立ちはだかる!
「待ちな小僧。最後の取って置きがあるぜ? 今度は本物中の本物だ」