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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ぺんにゃん♪

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「オレは男にお姫様抱っこされる趣味はないぞ?(こいつオレを助けたのか?)」
「こっちもそんな趣味などない!(なぜ俺は――)」
 思いかけてポチはすぐにミケを放り投げて遠くへ逃げた。
 その行動の意味をミケもすぐに察した。
「(あいつ、オレの〈サトリ〉が届かないところに逃げたな)」
 偽パンダは倒れたまま動かない。
 ミケは恐る恐る偽パンダに近づく。
「どうやら気を失った……ん?(なんだこれ、背中にファスナーがあるぞ!?)」
 これは禁断のファスナーだ。
 テーマパークにいる幻想(ファンタジー)の住人たちの触れてはならぬ禁忌(タブー)。
 人は見るなと言われると、どうして見たくなってしまう心理が働く。多くの場合、それを破ったがために悲劇が訪れる。
 鶴の恩返し、青髭、パンドラの箱、女性のすっぴん……例を挙げればキリがない。
 ミケの手はすでにファスナーへと伸びていた。
 しかしミケが手を触れることなく、そのファスナーは勝手に開きはじめた。
 開かれた偽パンダの背中からまばゆい黄金の光が漏れ出した。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
 それは蝶が羽化するように、偽パンダの中から謎の影が……
 シャキーン!
 超絶進化によってついにその真の姿を顕現させた前代未聞のスーパーヒーロー!
 赤いマフラーを風に靡かせ、ランニングシャツに股引に便所サンダル。
 まさかコレは!?
 パンダマン……じゃなーーーい!!
 たしかにパンダの被り物をしているが、その顔はテライケメン!
 そのときちょうどこの場にやってきたパン子。
「あ、お父さんこんなとこにいたの? お母さんが呼んでるかから早く来てよ」
 そのままパンダマン弐号の腕を引っ張って家に入って行ってしまった。
 家族が気づいてねぇーッ!
 ミケは深く頷いた。
「まあ、本人たちがそれでいいならいいんだよ」
 やっとこの場に戻ってきた、やっぱり出なかったベルによってペンギンスーツも修理され、これにて一件落着。
 そして、みんなもこの場から去っていった……痙攣するパンダマンを残して。
 誰も気づいてねぇーッ!
<章=番外編「GoGo☆パンダマン」
 コンビニの前で子供たちがシャーベットを食べていると、そこへあらわれる謎の影!
 首に巻いた赤いふんどし靡かせて、冬でも夏でもオールシーズンランニングシャツ。
 でも寒いから股引はいたりするけれど、股引って本来なにかの下に着るもんでしょ?
 そんなスネ毛カールで便所サンダル、今日も変態パンダマン!
「おうおう、子供の分際でアイスなんか贅沢品食ってんじゃねーよ。笹でも食ってろ笹でも!」
 ものすごい言いがかりだった。
 理不尽な変態パンダの登場に怯える子供たち。
 さらにパンダマンはケツあごを子供たちに近づけた。
「オイ、おまえらアイスの棒置いてけ」
 恐喝だ、恐喝に間違いない!
 きょとんとする子供たちに、パンダマンは青ヒゲをジョリジョリ子供のほおに押し当てた。
 変態だ!
「おまえらにとってはたかがアイスの棒かもしれんが、わしにとってはな……わしにとっては壮大な夢の一本なんだ!」
 脅された子供たちは恐怖のあまり、まだ残っているアイスを投げ出して逃げた。
 地面に落ちた溶けかけのアイスを三秒ルールで拾って食べるパンダマン。
「うまい!」
 ――一方そのころ。
 工事現場で働いているランニングシャツに腹巻きに股引のパンダマン弐号。
 流した汗を神々しく輝かせ、こっちのほうが本家よりもカッコイイ!
 そのイケメンっぷりが有名になって、今では工事現場に追っかけの女子たちが来るほどだ。
 しかし、そんなときパンダマンは!
 ――野良犬に追われていた。
「ソーセージの一本くらいでケチケチすんなよ!」
 どうやら野良犬と残飯の奪い合いになったらしかった。
「クソッ、人間様に逆らうんじゃねー犬っころ!」
 しかし、お犬様の猛ダッシュに人間がかなうハズがない。
 すぐにパンダマンはケツを噛まれた。
「ぎゃふゃ!」
 自称人間様のパンダ男と野良犬の死闘が繰り広げられる!
 取っ組み合いのケンカになりながら、道路をゴロゴロ、アッチに来たり、コッチに来たり。
 血だらけになったパンダマンは最終奥義を発動させた。
「トンズラ!」
 だがすぐに追いつかれた。
 野良犬に後ろから飛びかかられ、そのままパンダマンは壮大にコケたッ!
 地べたに這いつくばりながら、パンダマンは目の間にいた男に助けを求めた。
「だ……だずげで……ぐ……れ」
 手を伸ばした先にいたのは、電信柱の影でマーキングしていたポチだった。
 ポチは明らかに瀕死のパンダマンと、勝ち誇っている野良犬を見て、
「おのれ犬の敵め、八つ裂きにしてくれる!」
 いきなり斬りかかってきた。
 ――一方そのころ、今日もいい汗を流したパンダマン弐号は、次のバイト先の歌舞伎町界隈へ向かっていた。
 そんなときパンダマンは地獄二丁目に向かっていた。
 どうにか地獄を脱出しようとするパンダマンを追いかけてくる地獄の番犬。
 今日はなにかと犬に縁のある日だった。
 地獄の三丁目までやってきたパンダマンは力尽きた。
 そんなとき、天から一本の糸が伸びてきた。
「これで腐れ地獄から脱出してやる。生き返って死ぬ前にステーキを食ってやる!」
 パンダマンは糸を必死で登りはじめた。
 それからしばらくして、ふと下界を見下ろすと、地獄の亡者どもが糸を登って来るではないがッ!
「てめーら糸が切れるだろ、降りろ降りろ!」
 ここで糸が切れると見せかけて、突如糸がツルツルっと上で吸い上げられた。
 スポン!
 パンダマンは地獄の海――激辛ラーメンのスープの中から飛び出した。
 そのまま頭に斬新な麺で作ったヅラをかぶりながら、パンダマンは誰かの爆乳に飛び込んだ。
 もにゅっと。
 なにが起こったのかわからないパンダマンが顔を見上げると、そこには悪魔の形相をしたベルの姿が……
「このクソパンダ!」
 怒りの鉄拳を喰らったパンダマンがぶっ飛ぶ。
 鼻血ブーしながらパンダマンは呻いていた。
「わしの血が……血を補給するためにステーキを……」
 息絶え絶えのパンダマンをスルーしながら、ベルはこの状況を瞬時に理解した。
「どうやら〈歪み〉が発生して、どこかとラーメンが〈ゲート〉で繋がってしまったようね」
 よくわからないけど、そーゆーことらしい。
 ベルは胸の谷間からタバコとジッポーを出して、一息つこうとしたところで、まだパンダマンが生きていることに気づいた。
「アタクシの神聖な研究室を血で汚(けが)してるんじゃないわよ!」
 瞬時に白衣のポケットから殺虫スプレーを出して噴射!
 シュゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴーーーッ!
 発煙筒を使ったみたいにモックモクになったその場所で、パンダマンらしき影が四つん這いになって動いていた。
 そして、煙が晴れたそこにいた驚愕の生命体――人面パンダ犬!
 なんと怖ろしき珍獣。
「パンダなのに犬なんて白黒ついてねーじゃねーか!」
 もともとパンダなのにオヤジだ。
 人面パンダ犬はそう叫びながら逃げていった。
 そして、人面パンダ犬は都市伝説となった。
 繁華街のゴミ箱をよく漁っているという人面パンダ犬……。