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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ぺんにゃん♪

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 その強い想いはたとえ夢であっても、ミケの〈サトリ〉の能力で、嫌々聞こえてしまっていた。

 今日はお城の舞踏会ならぬ武道会。
 紳士淑女が己の技と技を競って戦っていた!
 おてんば姫パン子は、毒を盛ったり、人質に取ったり、恥ずかしい写真を駆使して、順調に対戦相手をコテンパンにしていくのだった。
 しかし、そんなパン子姫の前に強敵があらわれた。
 赤ラウンドから登場したのは、隣国のニャンニャン王国の王子ミケ。
 そのネコミミを見た瞬間、パン子の脳天にイナズマが直撃クラッシュ!
 ズキューん!
「なんてステキなネコミミなの。愛してます結婚してください!」
「よし結婚しよう!」
 即決かよ!
 その日のうちに二人は結婚式を挙げることになり、武道会は舞踏会へと華々しく変わったのだった。
 だがここで運命のイタズラがッ!
 時計の針が昼の十二時を指した瞬間、お城に流れるウキウキウォッチン○。
 ミケが急に慌てふためいた。
「しまった、昼飯を食べに帰らないと!」
 走り出したミケをパン子を追いかけた。
「お待ちになってミケ様ーっ!」
 ドン!
 伸ばした手でパン子はミケを大階段から突き落とした。
「ぎやぁぁぁぁぁぁ〜〜〜」
 華麗な階段落ちを魅せるミケ。
 社会の底辺まで転げ落ちたミケは血だらけになりながら、重大な異変に気づいた!
「サイフがねぇ!」
 ミケは階段の途中に落としたサイフに飛びつくが、無情にもそのサイフはいきなりあらわれたパンダマンに盗まれてしまったのだ。
 踏んだり蹴ったりのミケにさらなる不幸が落ちてくる。
 天から金だらいがッ!
 ガン!
 ミケの脳天に金だらいが直撃したかと思うと、なんと体がカエルになってしまった!
 なんてこったい!?
 それをパン子は食用とそうでない野草に分ける片手間に見ていて声をあげる。
「なんてことなのミケ様がウシガエルになってしまうなんて、食用にされて美味しくいただかれてしまう。嗚呼、なんという愛の試練!」
 しかし、いったい誰がミケにこんな呪いをかけたのだろうか?
 急にあたりが暗くなりはじめ、地響きが木霊した。
 ゴゴゴゴゴゴゴゴォォ!
 巨大なまん丸な影が姿を現した。
「ふふふっ、我が名は大魔王ペン子。ミケ王子を元に戻して欲しいなら、地球の温室効果ガス排出量を6パーセント削減するのだ!」
「そ、そんな大規模プロジェクト、アタシにはどうしよもない……!」
「そんなことはない。一人ひとりが力を合わせ、電気や水、限られた資源を節約することが大切なのだ!」
「イヤ、そんなのイヤ! アタシは貧乏生活なんてまっぴらごめんなのー!」
 もうミケを助けることはできない。パン子はヨモギを握り締め絶望した。
 そこへ紅いバイクに乗ってやってきた悪魔ベル。
「ちょっとそこのお嬢ちゃん?」
「なんかアタシに用?」
「早く借金返してくれないかしら?」
「え? アタシ借金なんかしてないけど?」
「ここに悪魔の契約書があるからご覧なさぁい」
 ビシッとバシッと突きつけられた契約書。

 命なんかいらねーから、わしはステーキが食いたいんじゃー!
                          Byパンダマン

 契約を見たパン子は、
「これってお父さんの契約書じゃ?」
「そのお父さんが逃げちゃったから、娘のアナタに肩代わりしてもらうのよ」
「……お父さんは去年マグロ漁船の上から海に落ちてサメのエサになって死にました。誰ですかパンダマンって?」
「とぼけてもムダよぉん。きっちり魂を払ってもらうわよぉ〜ん!」
 窮地に追いやられたパン子は、ここでビシッとペン子を指差した。
「アタシの命の代わりにペンギンのをあげます!」
「ええ!?」
 驚くペン子。
 しかも納得してしまうベル。
「それじゃあ、そっちの子の魂をもらいましょう」
 近づいてくるベルに焦ったペン子はこんな提案をした。
「ヒナとおともだちになったら、おまえに世界の半分をやろう」
「う〜ん、悪くない条件ね。乗ったわ!」
 契約成立!
 こうしてその数年後、大魔王と科学者が手を組み、地球の温室効果ガス排出量は、見事6パーセント削減に成功したのだった。けれど、それはまた別のお話である。
 話は戻って、パン子の前に立ちはだかるペン子とベル。
 もうパン子には打つ手がなかった。
 そんなときだった、小高い崖の上に逆光を浴びて立つ謎の人影!
「パンダだけに白黒つけようじゃねーか。正義のヒーローパンダマン参上!」
 シャキーン!
 首に巻いた赤いふんどしが風に靡いた。
 崖の上からジャンプしたパンダマンが着地に――失敗した。
 そのまま地面を転げ回り、ちょうどそこを通りかかった三輪車にひかれ、最後はたまたま電信柱の影にいた犬男の立ちションを浴びた。
 嗚呼、黄金水のキラメキが目に染みるぜッ!
 そして、ストーリー的になかったことにされた。
 パン子の前に立ちはだかるペン子とベル。
 こうなったらパン子に残された道はただ一つッ!
「この最終奥義を見てアタシを倒した者はいない……」
 パン子は全身の力を足に込めた。
「トンズラ!」
 脚力を活かした見事な逃走だった。
 パン子は逃げた、ミケの首根っこつかんで逃げた、社会の荒波から逃げた。
 それはめくるめく愛の逃避行。
 パン子とミケのハネムーン。
 そしてついにパン子は逃げ通したのだ。
 嗚呼、短かった死闘が終わった。
 数々の伝説の死闘に名を連ねないで語り継がれないことだろう。
「逃げ切ったアタシは人生というサバイバルゲームに勝った。なのにどうしてミケ様が元のお姿に戻らないの!」
 それは大魔王ペン子に勝ってないからだろう。
「嗚呼、どうしたらミケ様を……そうだ、こういうときは定番のキスね!」
 キス=回復魔法というのが世界の定説だ。
 見つめ合うパン子とカエル。
 モーソー! トキメキ! ロマンス!
 さっそくパン子はミケにキスしようとしたのだが――
「ゲローッ」
 嫌そうな顔をしたカエルが逃げた。
 まさかここにも最終奥義の使い手がいようとはッ!
 逃げるカエル、追うパン子、そこにあらわれるパンダマン!
「今晩のオカズだー!」
 パンダマンはウシガエル(食用)を強奪して逃げてしまった。
「ミケ様ーッ!」
 パン子は地べたに這いつくばって、去りゆくミケに手を伸ばして叫んだ。

 バシン!

 強烈な一撃を頭に受けてパン子は目を覚ました。
 目の前には丸めた教科書を持っているベル。
「授業中寝るのはかまわないけど、うっさいのよ!」
「……えっ、夢?」
 キンコーンカーンコーン♪
 寝ている内に授業が終わってしまった。
 そして、昼休みになってパン子はお弁当を食べることにした。
「今日のお弁当なにかなぁ〜。アレっ変な手紙が入ってる。なになに、今日のお弁当はお父さんの手作りなんだ、めずらしー」
 そんでもってお弁当箱を開けるとそこにはなんと――ウシガエルの丸焼き。
 げろ〜ん!