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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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ぺんにゃん♪

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「そうか、貴様が知らないのも当然だったな。貴様は生まれて間もない頃に、時空乱流が起こした〈ゲート〉を通って、この辺境の地に飛ばされて来たのだからな」
「話が飛躍しすぎてわからないから詳しく説明してくれ」
 まだわからないところが多すぎる。なんの目的でミケを狙うのか?
 ポチはひとまず大剣を納め、長々と話しはじめた。
「アルニマ――今はネコデスと奴らは勝手に呼んでいるが、その星に住む悪しきニャース族のニャー帝国によって、我らワンコ族は虐殺で多くの罪ない同胞が死に、住む場所も誇りすらも奪われた。最終的にアルニマからも逐われ、その衛星である不毛の地レッドムーンに隠れ住んだのだ。
 長い苦しみに耐え、ついに復讐の時が来た。我らはニャー帝国に内乱を起こさせ、皇帝を亡き者にした(実際はその生死は確認できていないが)。
 だがしかし、また新たなニャー皇帝が即位した。さらに皇族直系の血を引く者がいることが判明した――おまえだエロリック。皇族の血は絶やさねばならんのだ、絶対に、そう絶対にだッ!」
「なんでそこまでして皇族の血を絶やしたいんだ? 復讐のためだけなのか?」
「(貴様には〈サトリ〉の能力があるからだ。聞こえているな、エロリック!)」
 ミケに衝撃が奔った。
 それこそがミケを苦しめる元凶。
 ミケの持つ〈サトリ〉は能動的ではなく、受動的な能力のために、聴きたくもない心の声が聞こえててしまうのだ。
「(〈サトリ〉の能力はオレの経験上、心の内が全部わかるってわけじゃない。けどそれを意識的に隠せる人間はあまりいないと思う。だとしたらポチの言うことにウソはなかったことになるけど。親父みたいにウソをウソだと思ってない場合は別だけど)」
 いくつもの想いがこもった溜息をミケは吐いた。
 やはり自分は人間ではなかったという決定打。自分と同じ仲間が宇宙のどこかにいること。しかし、やはりこの地球では孤独であるという強い疎外感。
 再びポチは大剣を抜いた。
「話はもう終わりにしよう。武器を持たぬ貴様を斬るのは本意ではないが、ワンコ族の未来のために死んでくれ!」
 大剣が唸り声をあげてミケの頭に振り下ろされる。
 そのときパン子が叫んだ!
「待て!」
 ピタッとポチが動きを止めた。
 ハッとするポチ。
「しまった! 女卑怯だぞ、我ら由緒正しき貴族は、しつけが行き届いていると知ってそのそうな掛け声を!」
「動物園の娘を舐めないでよね!(ためしに言ってみただけなんだけど)ミケ様はアタシがお守りするんだから!」
 パン子の機転によってミケは九死に一生を得たが次はない。
 再びポチが大剣を振り上げようとしたとき、今度はペン子が叫んだ!
「お手」
 なんの躊躇もなくポチはペン子にお手をした。
「しまった! またもや卑怯だぞ! 礼儀正しきワンコ族が正式な挨拶を断れる筈がないだろう!(こいつら予想以上にできる)」
 ポチが予想以上にできないだけだろう。
 ミケはパン子とパン子を押しのけて前へ出た。
「これはオレの問題だ。おまえたちには関係ない。さっさとどっか消えろよ」
 無言でペン子は一歩引いた。しかしパン子は引かなかった。
「アタシはミケ様のことが好きだから!」
「だったらオレの言うことを聞けよ」
 気持ちを逆手に取られ、パン子はなにも言えなくなってしまった。
 これで一対一の勝負。
 ミケは一瞬にしてポチの懐に忍び込み、そのままアゴにパンチを食らわせようとした。
 それを紙一重で避けるポチ。空かさず大剣が風を薙ぐ。
 胴を真っ二つにするほどの一撃をミケは飛び退いて躱した。
 ポチは微笑んでいた。
「できるな、さすがはエロリック皇子(やはり〈サトリ〉の能力者は手強い)」
 ミケはポチの心を聴いて首を横に振った。
「能力は関係ない。本能と経験で剣を振るうアンタの思考は聞こえない。もし聞こえたとしても、聞こえたあとに避けていたら確実に斬られる」
「(では〈サトリ〉の能力を使わずに俺の攻撃を躱したと言うことか、屈辱だ!)」
 猛攻を開始するポチ。
 重量のある大剣が信じられないスピードで動き、目にも止まらぬ連撃を繰り出す!
 それをしなやかな体の動きで次々と躱すミケ。
 二人の戦いを見ていたパン子は眼を丸くしていた。
「(いつも体育見学のミケ様が……まさか強いなんて!?)」
「(親父のせいで何度も死にそうになって来たから、運動神経はあるんだよ!)」
 心の中で叫んだミケだったが、次の瞬間には両膝に手をついて肩で息を切らせていた。
「ゼーハーゼーハー(もう体力の限界だ)」
 これが致命的な弱点だった。運動神経があっても体力がなければ宝の持ち腐れだ。
 ことごとく攻撃を躱され、ポチも焦りを覚えていた。
「(こうなったら奥の手だ、封印を解くぞ)我が狂剣(きようけん)ウルファングよ、思う存分暴れ狂うがいい!」
 ポチの持つウルファングが唸り声をあげた。まるでそれは血に飢えた魔獣。
 そう、この大剣は生きているのだ!
 それゆえに封印を解いたとたん、勝手に動き出す。
 目を丸くするポチ。
「ちょ、待てウルファング……おおととととととっ!」
 あらぬ方向にポチが引きずられていく。まるでリードを持ったまま飼い犬に引っ張り回される飼い主。
「待て、待てウルファング!」
 飼い主の言うことを聞かない狂剣。
 引きずられて姿が見えなくなったポチだったが、しばらくして汗をぐっしょり流して戻ってきた。
「封印を解くのはなしだ」
 どうやら再びウルファングに封印したらしい。
 見事なポチのひとり芝居だった。まさに無駄な時間を過ごしたように思える。
 しかし、この時間の間にミケは体力を……取り戻していなかった。
 もう限界とばかりにミケは大の字に寝ころんでいた。
「あ〜〜〜死ぬぅ〜(無理しすぎた)」
 これはポチにとって絶好のチャンス。
「止めだエロリック!」
 丸太を一刀両断するように大剣が振り下ろされようとしていた。
 しかし、その前にペン子とパン子が立ちふさがった。
 ポチはためらわなかった。
「女を斬ったとあっては恥だが、ワンコ族の復讐を成し遂げるためなら、邪道と呼ばれても構わんッ!」
 ワン!
 イヌの鳴き声がした。
 なにがあろうと斬るつもりだったポチが止まっていた――一匹の野良犬を前にして。
 その野良犬はペン子が魚肉ソーセージをあげた野良犬だった。
 ポチは大剣を握ったまま動かない。
 野良犬もそこを一歩も動かない。
 互いに見つめ合い……ポチが負けた。
 大剣を鞘に収めるポチ。
「同胞のための復讐だ。たとえ地球に住む犬種であろうと、その命を奪っては大義名分が成り立たん」
 その言葉を残して立ち去ろうとするポチ。
 次の瞬間、不良教師の乗った紅い大型バイクに撥ねられた!
 ドゴォォォォォォン!!
 盛大に吹き飛ばされたポチは宇宙に帰って行ったのだった。
 それを見ていた一同。
「「「えぇぇぇぇぇーーーッ!!」」」
 愕然の終わり方であった。
<章=番外編「それゆけパン子姫!」
 うららかな陽気の中、トキワ学園の2年2組の教室では科学の授業が行われていた。
 教壇に立つベルの目の前で爆睡しているパン子。
「ミケ様……むにゃむにゃ……」