からっ風と、繭の郷の子守唄 126話~130話
からっ風と、繭の郷の子守唄(127)
「強風が過ぎ去った畑で、貞園が語るいい話と悪い話」
徳次郎老人の指導のもと、寒中の『畝(うね)起し』がはじまる。
そして数日後。
夜明けを迎えたばかりの桑苗の畑で、アクシデントが発生する。
凍結防止用に掛けられていたマルチ(ビニールシート)の一部が、激しく吹いた
夜半の風で吹き飛ばされた。
地面に敷き詰めておいた麦わらも、ほとんど残っていない。
すっかりむき出しになってしまった桑苗の土床が、霜で真っ白に凍結している。
「昨夜の強風が、悪さをしたと見える。
それにしても見事に吹き飛ばしたものじゃのう。
可哀想に植えたばかりの桑苗が、風に吹かれて丸裸だ。あっはっっは」
「徳次郎はん。笑い事ではおまへん。
四隅へ土を置いて重しにしとったというのに、聞きしに勝る
風の強さどすなぁ。
桑苗が霜にやられて凍結しています。成長に悪影響がおまへんか、
大丈夫でしょうか。桑は?」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 126話~130話 作家名:落合順平