からっ風と、繭の郷の子守唄 126話~130話
からっ風と、繭の郷の子守唄(130)
「女たちはそれぞれの相手に戻る。まずは、千尋の場合」
「さて。千尋ちゃんを下ろす場所に到着しました。
誰に気兼ねすることもなく、女たちだけで、温泉三昧の三日間を
過ごしてきました。
充分、決心も覚悟もついたでしょ。
見えるでしょ。ワンルームのマンションが。
ここが千尋を追って京都からやって来た、英太郎くんの仮住まいです」
千尋と美和子を乗せた貞園の真っ赤なBMWが、前橋市内の、
ワンルームマンションの駐車場へ滑り込む。
県庁と市役所が近い。そのため、出張などで役人たちが利用するケースも多い。
別名を『役人部屋』などと呼ばれている、ワンルームの建物だ。
「英太郎くんはここから毎日、桑を育てるため畑へ通っています。
ここへ戻るのは夜だけ。本業のウェブデザインの仕事をしています。
千尋のため、ほとんどの時間を、畑で過ごしていることになりますねぇ」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 126話~130話 作家名:落合順平