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からっ風と、繭の郷の子守唄 126話~130話

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からっ風と、繭の郷の子守唄(129) 
「朝採りのブロッコリーを挟んで対峙する、2人の美女」

 千尋のアトリエで、温かいシチューが湯気をたてている。
コトコトと音を立てながら、貞園の到着を待っている。
霜が降り、寒さがいっそう厳しくなると、露地で栽培されているブロッコリーは
甘味を増してくる。
寒さの中で育つ分。成長は遅くなるがその分、甘味は濃密になる。

 畑を真っ白に染め、葉を凍結させてしまう霜が、冬野菜たちを甘くする。
90%以上を水分で占めている野菜は、氷点下になると凍てつく。
凍結すると水の体積が増える。同時に細胞が壊れ、水分が外へ漏れ出ていく。
大切な水分が外へ出てしまうと、野菜は寒さの中を生きていくことができない。
そのため、細胞内にため込んできたでんぷん質を、糖に変える。

 水は零度で凍る。しかし糖があれば、氷点下になっても細胞は凍らない。
凍結を防ぐため、冬の野菜たちは糖分を大量に増やし続ける。
砂糖水は-27℃で、ようやく凍る。
それほど寒さに対して、強い抵抗力を持っている。

 「へぇぇ・・・それで冬野菜たちが甘くなるのか、なるほどねぇ」