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BOOK~白紙の魔道書~ 第一話「新年度1」

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ランスは床を拳で思いっきり殴った、その音は道場中に響き渡った。

「けれど負けは負けだ…さぁ俺の処罰を言い渡せ…なんでも聞いてやる」

「そうね、ならもっと鍛錬を重ねなさい、そして今年の大武闘会でハルトに勝利しなさい」

それは異例の処罰、普段なら処罰は部全体に有害なものをい渡すのが原則、しかし今回は部長にしかも鍛錬しろという処罰だった。

それを聞いたランスは、不服を申立てるでもなく、ハルトを睨み。

「次は必ず、貴様を本気出せたうえで勝ってみせる」

「お手柔らかにお願いします……」

イヤミではない、ただ率直にハルトはそう思った、ランスも手を抜いていたと。

自分も手を抜いた、相手も手を抜いていた、けれどランスは手を抜いた素振りを一切見せていなかった、つまり、ランスはハルトよりも戦いになれているのだ。

「ふんっ!お前には言われたくない言葉だよ!」

ランスは吐き出すように言葉を投げかける、それを聞いたハルトとカノン、カノンは自分の仕事をしただけだという態度でその場を後にするが、ハルトはやりきれな表情を浮かべ、その場を去った。

二人がいなくなった道場には、何故自分は手を抜き、そして敗れたのかと悔やむランスの振り下ろされた竹刀の空を切る音だけがこだました。

「貴方が本気を出せないことはわかりました、でも次はそれをバレないようにしてくださいね、なにせ次の相手は、あの武術部なんだから」

武術部、剣道部よりも更に強豪が揃っている部活、その部員の半数はどこかしらの魔武術の道場の跡取りやら師範クラスの人間だ。

そんな人間が集まる、武術部で手を抜いたなどバレたら、生徒会と武術部の戦争が勃発することは不可避だ。

「はぁ……全く面倒な部活だな」

ハルトは深くため息をつきそんなことを呟いた。

そして、懐から指輪を取り出した。

「わかったよ、今度は本気をだそう……一回くらいならバレないだろう」

それはカノンが初めて見る物だった、それはおそらくハルトの魔道具であろう。

魔道具とは、魔道書を介し魔術を使うための道具。

それは、剣であったりハルトのように指輪であったりするのだ。

(指輪の魔道具、しかも大した術式もない、一体どんな魔術を使うつもりなの?)

カノンは色々妄想を膨らませ考えるも考えつかず、わかってる事と言えばハルトが武器を作り出せるということだけ。

(なら武器を作る魔術かしら?いやでもさっき襲われたときは指輪なんてなかったし……)

考えれば考えるほどに、思考の渦に巻き込まれる。

それはいつしか、実際に声にだていたようで。

「う~ん、なにかしら……」

「どうしたのカノン?もうすぐ武術部の道場につくよ?」

その言葉にカノンは驚き自分が独り言を言いながら歩いていたと気づいた。

どうやら、道場に来るまでの道のりの半分からの記憶があまりない、つまりその辺りからずっと考えついには独り言まで出てしまったのだ。

「そ、そうね…さあハルト気合入れないさいよ」 

「本当にどうしたの?キャラが変わってるよ?」

「なんでもないわ、さぁ行くわよ」

カノンは自分の焦りと照れを隠すためにそそくさと、道場の扉を開けた。

そこには四人の部員と部長らしき人物が一人。

「なるほど、武術部はそう来たか」

それはハルトの考えていたパターンの一つに当たったのだった。

四天王的な部員と部長が一人、まずは四天王から倒し、最後に部長と戦うというパターンだ。

予想は見事に的中、武術部の部長はさっそくハルトの想定通り四天王を倒したら戦ってやると言ってきたのだ。

けれど次にハルトが言った言葉は、部長達が想定しているであろう予測とはまったく違うものだった。

「じゃあまずは四天王全員でかかってきなよ、じゃないと時間食うし、なにより殺しちゃうかもだから♪」

そうニヤリと笑いながら言うハルト、それはカノンですら予想できない展開だった。

それを聞いた四天王の面々は腹を抱えながら笑っている、どうやらそれだけ自分に自信があるのだろう、けれどその余裕は次の瞬間に消え失せた。

「いいよ、ならまずは一人だ『ルーラーゲネシス』起動」

瞬間、ハルトは魔道具を起動させつつ、一歩で一番近かった四天王の側まで近づいた。

「はっ!?」

そしてその四天王の一人は瞬く間に床に叩きつけられた。

「なに!?」

その場にいた全員がカノンを含めて驚愕した、なぜならカノンですら始めた見たのだからその、狂気に満ちた表情を。

「ふっふふ……さあ次はだれから来るの?はやく僕を楽しませてよ……」

その手には巨大な鎚を持っているが、途端鎚は光に包まれ“それは”巨大なチェーンソーに変わった。

これがハルトの魔道書『ルーラーゲネシス』の力の片鱗。

使うものの精神を狂気に落とすことで力を与える魔道書なのだ、これがハルトが本気を出すことを禁じられていた理由だとカノンは理解した。

そして、あることを思い出した、想像者の魔道書『ゲネシス』の名前を。

(ゲネシスですって、あれは確か作るのすら禁止されてる魔道書のはず?なんで彼がそれを持っているの?)

カノンがそんな心配をしているうちに四天王は全員、ハルトに倒され残っているのは部長だけとなっていた。

「ひっ……」

カノンが気づいたときには部長は怯えていた、それもそうだろう、狂気に満ちたハルトは一切の容赦なく、残虐的に四天王を切り伏せていったのだから。

「なんだつまんないな、カノンちゃんこんなの相手に本気出せって言ったの?もうつまんないじゃん」

どうやら狂気に落ちたハルトはご立腹の様子だ、どうやら四天王の相手、さらに怯えた部長を見て退屈に感じたようで。

「ちぇ、もういいよ、僕もう知らないだ、後はカノンちゃんお願いね」

そう言い、ハルトは糸が切れた人形のようにその場に倒れた、どうやら魔道書の停止させたようだ、ルーラーの魔道書は担い手の精神を犯して最後には精神を奪うものだと聞いたことがった、けれど今の魔道書はまるで遊ぶために体を使い、精神を奪うような行動を一切店なかった、それはハルトの精神力の強さか、それとも魔道書の気まぐれなのか。
 
「く、ひぃ、こ、殺してやる!!!」

部長は発狂、狂乱しハルトを殺そうと、懐に隠していたナイフで意識がないハルトに襲いかかるが、それはカノンによって防がれてしまう。

「そこから一歩でも動けば物理的に貴方に制裁を加えます」

「ひっ!?」

カノンは部長に向けて威嚇射撃、弾丸が部長のこめかみをかすり、部長はその場に尻餅をついた。

そして、それを見たカノンは冷徹な目で部長に対して処罰を言い渡す。

「貴方のような者に部を纏め上げる資格はない、よって部長降格、さらに道場の位置を変更します、ということでさっさと出てけこの豚野郎!!!」

最初は笑顔で話していたカノンも時期に怒りを抑えきれなくなり、ついに暴言を吐く始末となった。