からっ風と、繭の郷の子守唄 121話~125話
からっ風と、繭の郷の子守唄(123)
「重体の実行犯を乗せベンツは一路、岡本たちが待つ桐生市へ走る」
「姉ちゃん。頼みがある。
実行犯の怪我の様子を見てくれ。
運転席の座敷の下に、タオルと、緊急用の医療品が置いてある。
面倒を見てやってくれ。懐中電灯があるから、これを使え」
助手席から、小型の懐中電灯が届く。
明かりをつけた貞園が、身動きひとつしない実行犯を照らし出す。
胸から腹部へかけて大量の血が、べっとりと流れている。
「もしもし。組長。
指示通り、姉ちゃんと実行犯を救出しました。
姉ちゃんは無事です。しかし、実行犯のほうは撃たれて、
怪我を負っています。
姉ちゃんに確認してもらっていますが、まったく身動きしない状態です。
はい・・・俊彦さんのアパートへ直行ですね。了解しました。
姉ちゃんはどうします?。予定では、途中で降ろす手はずに
なっていましたが。
後を追ってくる車はありません。安全だと思います。
はい。わかりました、聞いてみます。ちょっと待ってください」
助手席の男が携帯の通話口を押さえながら、後部座席の貞園を振り返る。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 121話~125話 作家名:落合順平