からっ風と、繭の郷の子守唄 121話~125話
からっ風と、繭の郷の子守唄(125)
「前橋への帰り道、貞園は初めて康平の胸で甘えて眠る」
「どうどした。2階の貞ちゃんの様子は?」
「よく眠っている。
あれだけの修羅場をくぐり抜けてきたんだ。ようやく緊張が解けたんだろう。
毛布をかけ直して、そのまま戻ってきた」
30分ほどのち、康平と千尋がトシのアパートへ到着した。
実行犯の傷の手当はすでに終わっている。隣室へ移され、
枕元に岡本が付き添っている。
『何かあったら連絡してくれ。
といっても鎮静剤と睡眠薬を大量に飲ませたから、怪我人は何も知らず、
朝まで眠りこけるだろう。じゃ、また明日来る』と、
治療に当たった杉原医師が、そう言い残して帰っていく。
「お茶が入ったぞ。おい岡本。お前もこっちへ来て一休みしろ」
俊彦が台所から戻ってきた。
声をかけられた岡本が、のそりと立ち上がる。
居間へ顔を出した瞬間。会話をとめた千尋が、怖い目で岡本を見上げる。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 121話~125話 作家名:落合順平