それから (それからの続きの・・・の続きの・・続き)
「誰が、さんばんをクビにする言うたんじゃ? お前等、何処から聞いて来た?」
と・・。
3人は、たちまち小さくなって、
「実は・・」
と、その噂の出処を話す。オヤジさん、
「すぐに賢治を此処へ呼ばんか!」
と、大声を出す。事情を聞き、すっ飛んで会社に引き返して来た賢治は、オヤジさんからカミナリを落とされ、これまた小さくなってしまう。
この状況が展開される前、オヤジさんは、専務と会社設立以来の社員のJさんを呼び、AB建設の件と俺の処遇について、二人の意見を求めた。
専務とJさんは、長年に渡り、オヤジさんの指示には、絶対的に従って来た。
だが、結論として、今回の件に関しては、オヤジさんに、『ここは、一歩譲って、さんばんの我儘を通させてみてはどうだろうか。』
と、二人とも異口同音に社長を説いた。
専務は、多くを語らず、
「これからの○○には、社長に真っ向刃向かう者が、一人くらい居ってもええんじゃないですか? あいつの言い分も、一理ある様に思いますし・・」
と。
また、Jさんは、俺が辞めると、若い従業員の半分以上は、俺に続いて辞めると力説。そして、
「社長、あんたも覚えが有るでしょうが? あんた、昔、元請けと大喧嘩をして、そこから仕事を全部引き上げられた時の事を。あんた、あの時、こんぎゃに人情味の無い会社と付き合うとれるか。うちが潰れてもええけん言うて、意地を張り通してその会社を蹴った筈で。今、さんばんが遣ろうとしとる事は、昔、あんたが遣った事とそっくりじゃが・・」
と、上下関係を度外視して話した。
これには、オヤジさんも二の句が継げず、結局、3人大笑いして、一件落着。その後は、昔の思い出話に華が咲いたらしい。
俺には、再び出社する様にと、専務が話す事になり、不在だった俺の家を訪ねて来たという次第。
まあ、最初のうちは、オヤジさんも、俺に目を掛けていただけに、飼い犬に手を噛まれた様に感じて、面白くなかったらしいが、無理からぬことだ。
作品名:それから (それからの続きの・・・の続きの・・続き) 作家名:荏田みつぎ