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からっ風と、繭の郷の子守唄 116話~120話

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 「真っ暗闇の中で、銃撃犯を表に連れ出すためには出口までの経路を、
 頭の中に入れておけ、という意味ですね。
 でもできるのかしら私に。
 だいいち襲撃犯が、見ず知らずの私の言うことなんか、聞くかしら」

 「信じさせるためには、コツがある。
 最初に耳元で『味方だ』とはっきり告げて、警戒心を解く。
 相手を安心させることが大切だ。
 敵の真っ只中へ飛び込んできたんだ。
 よほどの猛者でないかぎり、気持ちは動転している。
 『逃げ道を確保してある。いまから案内する』と言えば、
 ほとんどの人間が無条件で従う。
 拒絶されたらその時は、見殺しにすればいいだけだ。
 いつまでもグズグズ関わっていると、お前さんが危うくなる。
 いいか。間違っても説得しょうなどと考えるな。
 深追いをする必要はない。
 『逃げよう』と言って、着いてくるようなら、そのまま表へ飛びだせ。
 従わない場合はすぐに諦めて、銃撃犯からさっさと離れろ。
 大切なのは銃撃犯よりも、お前さん自身の安全だ。
 修羅場のど真ん中では、冷静な判断力と行動が安全を左右する。
 お前さんの命を、危うくしたくない
 作戦Bは土壇場で、自分のために素早い判断を下せという
 シュミレーションだ。
 危険ギリギリの局面では、素早い行動が生死を分けることになる」


 「じゃあ、作戦Cというのは・・・・」

 「いっさい何もせず、その場をやり過ごせということだ。
 展開が早すぎて、店の電気を消すタイミングを失うことも考えられる。
 銃撃戦が始まってしまったら、急いでカウンターの中へ隠れて、
 体勢を低くしろ。
 または急いで床に伏せろ。
 銃弾は、どこから飛んでくるか分からない。
 まずは闇雲に発砲される銃弾から、自分の身を守ることだ。
 いいか。銃撃犯をたすけることなんか考えるな。
 自分の身を守ることが最優先だ。
 幹部が死のうが、巻き添えをくらって誰かが傷つこうが、いっさい動くな。
 耳をふさぎ、銃撃が通り過ぎるまで我慢しろ。
 生きて再び店から出てきたかったら、警察がやって来るまで何にもするな。
 ひたすら、自分の身の安全を守る。それが作戦Cだ」


 貞園が思わず、自分の両肩を抱きしめる。
『遊びじゃないんだよ。姉ちゃん』岡本の眼がぎょろりと、貞園を覗き込み。
『無理は言わないさ。危険の中へわざわざ自分から飛びこむんだ。
嫌なら今すぐやめてもいいんだぜ』とニタリと笑う。
そのまま静かに、顔を遠ざけていく。

 「無理をするこたぁねぇ。
 ママに依頼された通り、一週間を無事に乗り切れば、君のメンツは保たれる。
 銃撃戦が起こることは、前からわかっていることだ。
 そのときが来たらいち早く安全なところへ隠れて、警察が
 駆けつけてくるまで動くな。
 そうすれば怪我することもない。余計な巻き添えもくわない。
 悪いことは言わねぇ。
 おとなしくしていることが、お姉ちゃんの身のためになる」

 「でも、それじゃ、誰も助からなくなります」