からっ風と、繭の郷の子守唄 116話~120話
「美術大学へやって来たのは、平成14年の春。
あ・・・・またおじさまの、誘導尋問にひっかかってしまいました!。
まずいなぁ。私の本当の年齢がバレそうです。」
「ということは君は、俺の娘とひとつ違いだな。
そうか、まだ若いんだ。
じゃ、そろそろ本題に入ろうか。
君が『君来夜』へアルバイトへ行くのはいつからだ?」
「15日からの一週間。
君来夜(いえらいしゃん)の20周年記念でそのままお店が閉店になります。
ママもそろそろお歳です。
不景気が続くご時勢だもの、ちょうどの潮時かもしれません」
「ということはその一週間のあいだに、招待客が集まって来るわけだな。
その中に命を狙われている、例のヤクザが混じっているわけだ。
それを狙って、実行犯があらわれるということか。
美和子の旦那だった男が」
「押し入れに隠してあった拳銃が消えたそうです。
なので、ほぼ間違いは無いと思います。
でも、実際にどうやったらうまくいくのかしら?
けが人や死人を出さず、実行犯だけ確保して海外逃亡をさせるためには」
「すべては、君次第だな」
「え・・・・。わたし次第?」
「事前に襲撃の情報をつかんでいるのは、君と俺だけだ。
君の動きかたひとつで、うまくいくかもしれない。
だが、しくじる可能性もある。
襲撃に関してはいろいろなパターンが考えられる。
まずは、ひとつずつ作戦をたてる必要がある。
きわめて困難な仕事だが、聡明な君なら、きっとうまくやれるだろう」
「忍者のくのいちか、まるで女スパイみたいな世界ですねぇ。
うふふ。今から、ワクワクしてきました」
「こら。映画やテレビの話じゃないぞ。まずはお前さん自身の安全が最優先だ。
手順を説明するから、よく聞いてくれ。
俺のところの若い者を、一週間の間、近くの駐車場へ待機させておく。
お前さんの仕事は実行犯が顔を見せたら、すぐに俺の若い者へ
連絡することだ。
それだけでいい。
店の前へ移動して、連れ出すための準備に入ることができる。
これが第一ステップだ。ここまではできるな?」
「顔を覚えているから、来れば、すぐにわかると思います。
でもメガネやマスクで変そうしていたら、すぐに確認は出来ません。
見破る自信もありません。
そんな時は、どうすればいいの?」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 116話~120話 作家名:落合順平