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からっ風と、繭の郷の子守唄 111話から115話

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 「美和子?・・・・
 ああ思い出したぞ。あん時の歌手の女の子だな。
 やっぱり俺たちの世界に関係のあるところで、生きてきたのかあの子も。
 悪い意味で言っているわけじゃない。
 当の本人が知らないうちに、連中に利用されているというケースはよく有る。
 女を隠れ蓑として使うんだ。
 俺たちの世界では常套手段のひとつさ。
 この写真の男が、世間を知らない美和子を、上手にたらしこんだようだな。
 お前さんの初恋相手は、運が悪かったようだ。
 いきさつに関してはよくわかった。
 では聞く。お前さんの頼みごとはいったいなんだ?。
 この俺に、なにをさせるつもりだ」

 康平が胸ポケットから、銀行の紙袋を取り出す。
何もいわず、紙袋をそのまま岡本の前に差し出し、丁寧に頭を下げる。

 「美和子は妊娠中です。まもなく6ヶ月目に入ります。
 亭主からDVを受けて、たびたび別れることを考えていたようです。
 最近、危険を察知して、離縁の意思を固めて家を出ました。
 ある女性のところで、身を潜めています。
 しかし、男のほうに、離婚する意思はまったくないようです。
 このままでは、いつまで経っても美和子を助けることができません。
 そこで岡本さんに、こうしてお願いに参上しました」

 「初恋相手を助けてやりたいという、お前さんの心情はよく分かった。
 だが決着を俺に頼みに来るというのは、堅気の人間のやることじゃない。
 初恋相手をたすけたいのなら、真っ当な方法を採るべきだ。
 お前さんが取るべき行動は、まずこの写真を警察へ届け出ることだ。
 そうすれば、男を逮捕されるだろう。
 夫婦のあいだの出来事は、夫婦の間でしか解決できない。
 別れるのも、復縁するのも、当人同士が決めることだ。
 周囲があれこれと騒ぐ話ではあるまい」

 「たった一度、警察に頼らずに、こいつを捉えるチャンスがあります。
 こいつはあくまでもやることが、小心者といえる単独犯です。
 たぶん今回の襲撃も同じように、また単独で行動すると思います。
 その瞬間。こいつを確保するための、絶好のチャンスが生まれてきます」
 
 「な、なんだと。何を考えているんだ、お前は。
 こいつを警察に渡さず、身内である俺たちに捕まえさせようという、
 そういう魂胆なのか!」

 「はい。その通りです」