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からっ風と、繭の郷の子守唄 111話から115話

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 「今年の3月。スナック君来夜(いえらいしゃん)で発砲事件が発生しました。
 その時の犯人と思われる人物が、再び重要人物を狙うそうです。
 今月の半ばからの一週間のあいだに、その男が、間違いなく
 襲撃するだろうという、確定的な情報をつかみました」

 「なんだと・・・・おい、ちょっと待て。
 詳しい話を聞きたい。だが、人目があるのでここではまずい。
 ママ。裏の座敷を少しの時間、貸してくれ。
 ここで話すにはまずい要件を、どうやらこの坊主が持ち込んで来たようだ。
 座敷なら、焼酎より熱燗が飲みたくなった。
 悪いなぁママ、いつも。わがままばかり言ってよ」

 『あいよ』と応じたママが、熱燗の支度を整えて店の裏手へ運んでいく。
宴会用の座敷として、店の裏に離れが増設されている。
離れに刃、3つの部屋が連結している。
全てを開け放つと大宴会用になる。
 
 火の気が全くない離れの空気は、底冷えするほど冷え切っている。
急いでスイッチを入れたエアコンの吹き出し音が、これから始まる
2人だけの密談を、じわりと温める。

 準備を整えた辻のママが、『用があったら電話で呼んでくださいな』
と岡本に目で合図して立ち去っていく。
『とりあえず、一杯いけ』 岡本が熱燗を持ち上げる。
正座した康平が、硬い表情のまま盃に熱燗を受ける。
自分の盃へ注ごうとしている岡本の手から、熱燗の徳利を受け取る。
『どうぞ』と盃の口いっぱいまで、ゆっくり酒を注ぐ。

 「極秘の情報をなんでまた、お前さんが手に入れたんだ。
 あの時の襲撃犯は、正体すら分かっていない。
 警察だって手を焼いている。
 何者かさえ分からず、正体不明のまま、いまだにどこかに潜伏中だ。
 そいつがまたが幹部を狙って、襲撃するというのか?」

 「実は、実行犯の顔写真を入手しています」

 「なんだと!。
 警察でもないのになんでお前が、そんなものを持っているんだ」
 
 康平が携帯電話を取り出す。
貞園から送られてきた美和子の亭主の画像を、探しはじめる。
ほどなくして再生された画像を、そのまま岡本の目の前に提示する。

 「この男です。こいつが3月の発砲事件の実行犯です。
 こいつが、2度目の襲撃を狙っています。
 この男の顔に岡本さんは、見覚えがありますか?」

 「知らんなぁ。まったく面識はない。初めて見る顔だな。
 襲撃の情報といい、この写真といい、これはいったいどういうことだ。
 なんでこんなものをお前が持っている。
 そのうえ、2度目の襲撃の情報まで握っている。
 詳しく話せ。俺によく分かるように」

 「この男。実は、美和子の亭主なんです」