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からっ風と、繭の郷の子守唄 111話から115話

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 『もしもし、岡本という者ですが』と相手が名乗った瞬間。
貞園の怒りがいきなり頂点に達する。
鼓膜を切り裂くほど鋭どく響いた貞園の悲鳴は、受話器のはるか向こうで
相手の耳にこれでもかとばかりに響き渡る。
充分な手応えを感じた貞園が、『してやったり』とニコリと笑う。

 「なるほど。康平が言っていた通り、確かに君は相当のおてんばだ。
 事前に聞いていたから、直撃を受けずに済んだ。
 君と話がしたいので、明日の午前10時、前橋の駅前広場でお会いしたい。
 目印は白いベンツ。ナンバーは5910(ごくどう)。
 じゃ詳しい話は、その時に」

 と、いきなり電話が切れてしまう。
『おっ、さすがにたくさんの修羅場をくぐってきた極道だ。
実に抜け目のない対応をする。よし。こうなったら明日合った瞬間、
思いっきり蹴飛ばして、引っ掻いてやる!』
と貞園が、作戦を立て直します。
そして、翌日。

 貞園が時間とおりに駅前広場へ出かけていく。
白いベンツはすでに到着している。
白線内に、きっちりと停まっている。だが運転席にそれらしい人影は
見当たらない。
再び出し抜かれてしまった貞園が、諦めきれず運転席を覗き込む。

 「君が噂の貞園か。なるほどね。
 予想していた以上の美人だ。かつチャーミングだ。
 おてんばでさえなければ、男たちにモテるだろう。
 おっとと。とりあえず至近距離へ寄ってくるのは、やめてくれ。
 赤くキレイに磨きこまれた鋭い爪で、思い切りひっかかれた日には、
 大変なことになる。
 女房へのいいわけで、俺が四苦八苦することになる」

 「あらまぁ。私の必殺技まで、いつの間にかご存知なのですか。
 でしたらもう、完全に打つ手がありません。
 降参します。ギブアップです」

 「いい心がけだ。いさぎが良いのが、気に入った。
 この先の行きつけのゴルフショップが有る。
 レディスウェァの『ブルークラシッュ』が冬物の新作を、発表した。
 大人可愛いがテーマーだそうだ。
 君にぴったりのような気がするよ。
 君さえよかったらゴルフショップを覗いてから、その後、
 お茶を飲みながら、話をしょう」

 「えっ、。『ブルークラシッュ』の新作の発表会!。
 なんで私の気に入りのゴルフウエァまで、ご存知なのですか!」
 
 「ある筋からの情報だ。
 メディアも大注目!。超キュートな女の子の為のゴルフウエアの
 『BLUE CRUSH』。
 カラフルな色合いと、にぎやかなパターンに、もうあなたの胸はキュン!
 これでコースに出れば、お目立ち度100%は間違いナシです・・・
 もらった案内状には、こんな風に書いてある。
 いつもの俺ならこんなものはさっさと丸めて、クズ箱へポイだ。
 だが、今回だけは話が別だ。
 どうする、行くか行かないのか。早く決めてくれ。
 忙しいんだぜ。こうみえても極道のおじさんは」

 「うう~ん・・・『BLUE CRUSH』の冬の新作か。
 まいったなぁ、乙女の心がもうメロメロです。
 はい。まいりました。完全におじさまに降参します。
 ブルークラッシュの新作同様、おじさまにも胸がキュンになりそうです。
 あらためて、はじめまして。台湾生まれの朴貞園と言います。
 『じょんうおん』と発音しますが、お友達は私のことを、
 貞ちゃんと呼びます。
 おじさまもよかったら『ていちゃん』と呼んでください」

 「嬉しいね。ジジィがおじさまに昇格したか。
 それでは君の気が変わらないうち、早速行こうか。肝心の話はそのあとだ」