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からっ風と、繭の郷の子守唄 111話から115話

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 「密航?、国外逃亡をさせる?。まるでスパイ映画だな。
 被爆患者の面倒を見てやったと思えば、今度は国外逃亡の手助けか。
 近頃の極道は、多忙だな。
 いいよ。その程度でよければ簡単なことだ。いつでも連れてこい」

 「ついでに、病院の先生にも話をつけておいてくれ。
 もしかしたら銃撃戦がおっぱじまって、そいつが怪我をする可能性もある」

 「銃撃戦?。ずいぶんとやばい話だな。だが、ますます面白くなりそうだ。
 どうなるんだ。勝算はあるのか?。うまくすすみそうなのか?」

 「襲撃の目安ははっきりしている。場所も特定できている。
 協力者になってくれそうな女の子が、ひとりいるそうだ。
 康平から、その協力者になるという女の子の電話番号を、聞き出して
 おいてくれ。
 一度行き会って、俺からそいつに協力を頼んでくる」

 「なんなのさ。
 さっきまで泣いていたカラスが、もう豹変しているわねぇ。
 面白そうなお話をしていますねぇ。ちょい悪のオヤジ2人が」

 刺身の皿を持った辻ママが、密談中の2人の間へ割り込んでくる。
『はい。どこかの不良の心労をねぎらって、私からの陣中見舞い!』
2人のテーブルの上へドンと、岡本の好物が置かれる。

 「で。なんなの。さっきからヒソヒソ話をしているのは?
 可愛い千佳子にも関係ある話だもの。
 なにかあれば私だって、ひとはだ脱ぎます。
 なに、その目は。こう見えてもこの肌は、シミひとつないのよ。
 白いうえに柔肌で、お餅のように綺麗です。
 あらやだ・・・・関係ないことを、なんでペラペラと語っているのかしら。
 いやですねぇ・・・
 いくつになってもお嫁に行けない、独り身女というものは!」

 「あはは。心配すんな、ママ。
 カラオケを歌う順番を決めていたところだ。
 2番目は俺が歌う高倉健。曲はやっぱり、18番(おはこ)の
 『網走番外地』。
 3番目は北島三郎の『兄弟仁義』を、トシが歌う。
 となれば、1番はママが歌ってくれる、藤純子の『緋牡丹博徒』で
 決まりだろう。
 という話がたった今、俺とトシの間で決まったばっかりさ。
 さすがにママだ。
 タイミングをわきまえての登場ぶりは、やっぱり千両役者だ」


 「なんだか、上手く、はぐらかされてしまいました。
 そうですね。難しい話はさておいて、不良トリオでカラオケと
 まいりましょうか。
 背中へ入れた緋牡丹の刺青を、殿方が見てくれるのは
 いつの日のことでしょう。
 ああ・・・
 今夜も切なくひとりで寝るか。あきらめて。独り身のあたしは・・・
 うっふふ。馬鹿なことを言ってないで、不良の歌でも入れますか、早速に」