からっ風と、繭の郷の子守唄 105話~110話
からっ風と、繭の郷の子守唄(108)
「難しい岐路に立たされたふたりが見つけた、とりあえずの夢は・・・」
「赤い糸が別々にもつれたまんま、わたしたちは間違って、
ここで出会ってしもたようどす。
でもあたしは、立ち止まるつもりはおまへん。
走り始めてしもたあたしの心は、もう、止めることがでけしません」
夜景が、曇ったフロントガラス越しに広がる。
前を見つめたままの千尋が、まるで自分に言い聞かせるように言葉を選ぶ。
『タッチ』CDが途切れたあと、車内にまた、静かな夜が戻って来た。
アイドリングと、暖かい空気を吹き出してくるエアコンの
音だけが、2人の耳に響いてくる。
「すっかり忘れておりました・・・・
いままでの感謝の気持ちを込め、「ぐんま黄金』から採れた糸で、
シルクのミニマフラーを作りました。
マフラーの半分。タオルより、ちょっぴりいかい(小さな)なサイズどす。
首が寒い時のネックウォーマー代わりに使ってください」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 105話~110話 作家名:落合順平