からっ風と、繭の郷の子守唄 105話~110話
「超えなければならへん、あたしのハードルどす。
曖昧にしたくないのどす。
ようやっとのことであなたに、すべてを話せる勇気が湧いてきました。
嫌われるのは覚悟の上どす。
深い関係になるまえに、今のわたしすべてさらけだします。
あなたと出会った最初の時から、早く話さなければと決めていたのに、
ごめんなさい。わたしは計算高い、ずるい女で・・・・」
「卑下することはありません。
言いにくいことを、正面から語ってくれたあなたの勇気に、感謝します。
『タッチ』のCDを見て、ある言葉を思い出しました。
『敬遠は一度覚えるとクセになりそうで』
という、上杉達也のセリフです」
「あっ、それ。いったい、いつの間に!」
「あなたが告白しているあいだ。ふと手に当たりました。
ドキドキしながら聞いていたもので、思わず手が暴走してしまいました。
すみません。不謹慎な男で・・・」
「大好きなんどす、ウチ。『タッチ』が。
『そうだ。ここで逃げたらクセになる!』とキャッチャーが答えています。
先のばしして、逃げたがっている自分を、踏みとどまらせてくれました。
腹をくくるのに、効果的なセリフどすなぁ」
「『おい、バカ!』『なぜ新田と勝負した。』
『敬遠は一度覚えるとクセになりそうで。』
新田明男に1点リードされる、完璧なホームランを打たれた直後の
ベンチのシーンです。
高校野球漫画『タッチ』の、大好きなクライマックスシーンのひとつです」
「あら、よく知ってますねぇ。
もしかしたら、あなたも『タッチ』のファンの一人なん?」
「あだち充は、群馬県の伊勢崎市の生まれです。
野球の強豪、前橋商業高校を卒業しています。
『上杉達也は、浅倉南を愛しています。世界中のだれよりも!!。』
『ここから始めなきゃ、やっぱりどこにも動けねえみたいだ。』
という上杉達也と浅倉南のクライマックスシーンも、
やっぱり、心に滲みて、素敵です」
「ええわねぇ。
南が『千尋』に変わっとったら、もっと素敵やったのに・・・・」
「あっ。まずい、絶好球を見送っちまった!」
「大丈夫どす、まだワンストライクどす。
チャンスはまだ、あと2球も残っていますから。うふふ」
♪~呼吸を止めて1秒 あなた真剣な目をしたから
そこから何も聞けなくなるの 星屑ロンリネス
きっと愛する人を大切にして 知らずに臆病なのね
落ちた涙も 見ないフリ
すれちがいや まわり道を
あと何回過ぎたら 2人はふれあうの
お願い タッチ タッチ ここにタッチ あなたから
手をのばして 受けとってよ
ためいきの花だけ 束ねたブーケ
愛さなければ 淋しさなんて 知らずに過ぎて行くのに
そっと悲しみに こんにちわ
テレビアニメ「タッチ」オープニング主題歌
歌:岩崎良美 作詞:康珍化、作曲・編曲:芹澤廣明
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 105話~110話 作家名:落合順平