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からっ風と、繭の郷の子守唄 105話~110話

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 11月。最初の日曜日。
貞園からの電話で美和子の異変を知ったのは、妙義登山の真っ最中のこと。
紅葉と、登山を一緒に楽しみたいという千尋の要望で、妙義山へ
やってきたばかりだ。
麓にある駐車場から、中ノ岳神社で登山ポストへ山登りの用紙を投函し、
案内看板に沿って、樹林地帯を歩き始めたばかりの時だ。
山ガールといういでたちの千尋は、早くも腰へ手を当てて一息ついている。

 「妙義の山を歩き始めたところだ。
 紅葉にはまだ少し早い。でも、場所によっては真っ赤に色付いた木もある。
 なんだい。急用って?」

 『ということは、今日も千尋ちゃんとご一緒ですか、羨ましい。
 思春の真っ只中ですねぇ、お2人とも。
 そういうことなら仕方ありませんが、事は急を要しますので
 用件だけを伝えます。
 美和ちゃんがDV旦那から脱走してきました。
 当分の間、私のマンションで彼女をてかくまうことにしました。
 そういうことです。
 そちらのデートが片付き次第、こちらへ連絡を下さい。
 以上、貞園から緊急を要する連絡でした。じゃあね千尋ちゃんによろしく。
 それじゃまたねぇ~。バイバイ・・・・』

 「おい。待て、待て。もう少し詳しく話せ。いきなり切るなよ、
 おいこらっ、待てよ貞園!」

 『バッカじゃないの。康平ったら。
 長電話をかけたら、千尋ちゃんが変に思うでしょ。
 あんたは嘘がつけない人だもの。
 とりあえず、2人で登山を楽しんできてちょうだい。
 事態は長びくことになるでしょうから、今夜でも充分に間に合います。
 了解しましたか?。モテる男は大変ですねぇ。
 『二兎追うものは一兎も得ず』ということわざが有ります。
 康平の両天秤は、とても危険です。
 両方に振られても、最後は私が面倒を見てあげますから、安心して頂戴。
 あははっ、じゃあね。本当に切りますよ。もうこれで』

 「おい、待てったら、こらっ。あ、本当に切りやがった・・・・
 いったい、どうなっているんだ。あいつ・・・」

 「どうしました?。
何か急な用でも発生しましたか、貞ちゃんからでしょう、今の電話?」

 「いや。別にたいした用件じゃない。
 帰ったら打ち合わせをしたいことが有るので、連絡をくれということだ。
 それだけを伝えたら、自分から勝手に電話を切りやがった。
 いつものことだ。自分勝手な妹だ」