映画 戦国生徒会
第22章: 面倒な日常に帰る
沖縄からの帰りの飛行機の中では、前夜に登山部3人が、また女湯を覗こうとして捕まったという話題で持ちきりだった。ついに、上坊はバイセクシャルか? という噂が飛び交った。
トイレに立った博之は座席へ戻る途中、恵美莉の隣の席が空いていたので、立ち止まった。
「あはは。キッド、なんか疲れきった顔してるよ」
「座っていい?」
「ココ、ずっとどっか行っちゃてるから大丈夫」
「あーあ。思うようにいかない修学旅行だった」
「・・・? なんか前にも同じこと言ったの覚えてる?」
「え? いつ?」
「中二の修学旅行。新幹線の中」
「そうだっけ。ちょっと思い出した」
「奈美のことよ。中学の時、付き合いたくてもうまくいかなかったこと。帰りの新幹線の中で同じこと言ってた」
「懐かしい名前。あいつのことは言わないでくれ。消し去りたい記憶なんだ」
「キッド。あんた佐藤さんのことスキなんでしょ」
唐突に恵美莉が言った。
「な、な・・・」
「でもうまくいかなくって、悩んでるって感じよね」
「そんなんじゃないけど」
「まぁ、佐藤さん、かわいいから仕方ないけど。死神が付いてるからね」
「んー、死神さんって正直なところ、どんなヤツかなって思ってた」
「お。ごまかさなかった。ズバりその彼氏が気になってる訳か。分かり易い性格」
「んー、相手は大学生だから、迂闊には戦えないし」
「ほら、また。もう佐藤さんが好きって自白したようなもんよ」
「ん? もういいよ。ここにいると墓穴掘りそう」
と言って立ち上がると、
「キッド」
恵美莉は小さい声で、呼び止めた。
「佐藤さん。きっとキッドのこと気にしてるよ。ずっと見てるもん」
博之は、苦笑いした。(もうバレてる)
恵美莉は、こんな最高の情報を渡したのに、驚かずに去って行った博之を見て、
(もうかなり進んでるな)
と気付いてしまった。