映画 戦国生徒会
第21章: オクラホマ・ミキサー
立食パーティのメインイベント、男子が待ちに待った“フォークダンスタイム”。本来サプライズとして企画されたものだったが、すでにその噂が全体に広がっていたのは、男女共、それなりに淡い期待を持っていたという証だ。
「それでは男子が外側、女子内側に並んでください」
実行委員の指示で、総勢300人近い生徒と引率教師までが男女別に二重の輪になった。150人もの相手と僅か数秒の間、交代で手をつないで踊る訳だが、無事1周出来るだろうか。
明らかに男子生徒の多くは、佐藤に近いポジションを取ろうとしているのが博之には分かった。博之は慌てず、友達の多い適当な場所に入ったが、その時、千鶴とは目が合った。
ステージ上で、実行委員が模範のダンスを1・2・3・4と手拍子で披露して、会場の生徒は軽くステップを踏みながら、イメージトレーニングをしていると、
「ミュージックスタート!」
いきなり、フォークダンスの定番曲『オクラホマ・ミキサー』が流された。
ドタバタとダンスが始まり、ムフフフと全員照れながら踊りだすと、このタイミングでホテルのスタッフは無表情で、お皿の片付けを始めている。なんとも異様な光景だった。
『オクラホマ・ミキサー』は最初の少しだけで、その後は流行曲が編集されていて、だんだんと雰囲気は盛り上がって行った。テンポの遅い四拍子の曲であれば、意外に踊れるものだ。
踊り始めてすぐに、博之はメイク担当の椋ノ木と対面した。今まで博之の顔に散々触りまくってきたくせに、手を指で摘まむようにつないで、笑いながら踊って行った。
暫くすると津田が来た。椋ノ木と同じように、博之の指を摘まんで持った。山崎も金城も、映画スタッフの女子はみんな、男子スタッフの手を指で摘まんでくるのだった。
そして千鶴が近付いてきた。博之の前の男子とは、手をしっかりとつないでいた。でも、博之の番になると。
「ウフフフフ。ごめんね。男子スタッフにはこうしようって、みんなで打ち合わせたの」
「やっぱり指で。俺は別にいいけど。楽しみにしてたやつもいるんだぜ」
「不純な動機、キモイよ」
「そのためのイベントですよ」
「じゃあね」
最後の瞬間だけ、千鶴は博之の手をしっかりと握って次に交代した。その瞬間、博之の顔はにやけてしまった。