映画 戦国生徒会
第19章: 元カレ・元カノ
「ひろぽん、ごめんなさい。突然、元カレが来たのよ」
「あん? どういうこと?」
「別れたつもりなのに、別れてないって言うの」
その日、帰り道で待っていた博之は、なかなか帰って来ない千鶴からの電話で、こう告げられた。
「それは問題だ」
「しかも、近藤君たちと意気投合しっちゃって、映画の主題歌を作ってくれることになったの」
「それは良かったな・・・えっ? 何だって? それもまた問題だ」
「みんな元カレと私が、今もまだ付き合ってると思っちゃったみたいで、どうしよう」
「どうしてそんな。これは大問題だぁ!」
千鶴の元カレ、ハンサム死神さんが率いるハードロックバンド『性飢魔III(せいきまさん)』、突然の登場で、彼らが映画の主題歌を歌うことが決まった。その4人組バンドは地元のライブハウスで活動する大学生で、千鶴は高1の時からの「知り合い?」だった。そのリーダーはハンサムと名乗っているが、本人もそれほどイケメンとは思っていない。死神としてはマシな顔というコンセプトで、プロバンドの『聖飢魔II(せいきまつ)』をリスペクトするコピーバンドのリーダーで、ドラムスを担当している。
「死神さん、映画のタイトルは、『戦国生徒会』で、そのテーマに合わせて作詞したんですが、これに曲を付けて欲しいです」
と近藤が頼むと、
「うちのギターが、こんなん余裕で作曲しよるわ」
「一応、映画のイメージが分かるように、編集済みの動画も見てください」
「よっしゃ。ほな1週間くれ」
「じゃ、修学旅行から帰ってきてからのお楽しみということで」
と、このようにトントン拍子で、千鶴の意図しない方向に、話が進んでしまったというのだった。
「みんな。メインテーマ曲、出来そうだぞ」
中川が嬉しそうに映画スタッフに伝えた時には、博之は千鶴からことのすべてを聞いており、まさに死神に取り付かれたような顔をしていた。