映画 戦国生徒会
「今日は天気が良かったから、河原のシーン撮影出来たかな」
「そればっかり気にしてるのね」
「だって俺のせいで、みんなに迷惑かけちゃってるからね」
「ちょっとぐらい大丈夫でしょ」
「ちょっとのことじゃないよ。ワンカットずつの積み重ねって、なかなか進まないんだよ」
「それより夏休みどこかに行こうよ。まだ二人で遊園地とか行ったことないし、私行きたいな」
「そうか、いいよ。でもジェットコースターとかに乗ったら、首がもげるかも」
「そういうの私も乗りたくないから、大丈夫。プールでもいいな」
「でも、撮影があるからまずいな。まだ日に焼けるのはダメだし」
香織には撮影の心配ばかりを口にするようになり、香織のフラストレーションもピークに達していた。
事故の4日後、博之は首にコルセットを巻いたまま、父親に車で送ってもらって登校した。
「おっ! カオナシ。もう大丈夫なのか?」
学校に行くと、博之には「カオナシ」という新しいあだ名が付いていた。
博之が撮影に復帰するまでは、まる1週間かかった。それでもコルセットを一時的に外して、アクションの少ないシーンから撮影していくしかなかった。
(中川豊) 「無理しなくてもいいぞ」
(津田柚華) 「キッド君、私たち夏休みも撮影する気でいるんだから」
梅雨も終わり、また快調に撮影が出来るようになって、博之以外のシーンでも大忙しになってきた。
龍子役の恵美莉は博之のケガを気遣いながら、無理に動かさないように立ち位置を確認したり、ワンカット終わるごとに、博之の小道具を持ってやったり、ジュースを渡したりしている。ほんの僅かな博之の動作にも気を使っていた。
恵美莉が撮影に来るのは稀なので、それ以外の日は、千鶴が恵美莉と同じように気を使うようになった。その後、博之のコルセットが不要になってからも、千鶴は近藤といる時間より、博之の側にいる時間の方が多くなり始めていた。