映画 戦国生徒会
第8章: 別れましょう
1学期最後の美術の授業の前、博之は休み時間に香織に呼び出され、美術室の前の廊下に出た。香織は隣の生活実習室に来ていたのだが、最近あまり一緒にいる時間がなかったので、不満を伝えるつもりだった。
「最近全然会ってくれないでしょ。どう思ってるの」
「毎日LINEしてるし、電話もしてるし、こうしてたまにだけど会ってんじゃん」
博之は廊下に出るなり、文句を言われたように感じ、壁にもたれて少し不服そうに言った。
「前は、一日中一緒にいたと思うんだ」
「それは、一年の時、同じクラスだったからだろ」
「クラスが違っても、休み時間毎に会いたい」
「無茶言うな。そんな暇人じゃねえ」
「ひどい。一緒に帰ることも出来ないのに」
「確かに、撮影とか編集とかで遅くなって、一緒には帰ってないけど。そういう時には必ずLINEにメッセージ送ってるよ」
「また撮影の話ばっかり。ヒロ君じゃない写真送られても嬉しい訳ないでしょ」
「・・・・・・」
「もう! 撮影と私とどっちがいいのよ!」
「・・・今は、撮影かな・・・!」
博之も少し腹を立てて、こう答えてしまった。周囲には、二人の危うい雰囲気に、人が集まりだしていた。
「じゃ、別れましょう」
香織はこう言って、我慢していた涙をこらえられずに、ついに泣き出してしまった。
「なんだよ・・・」
周囲に緊張が走った。歩いていた生徒も立ち止まり、一瞬で人だかりが出来て二人の動向を注視している。
廊下に出ていた生徒、十数人に取り囲まれて、こんな場面を晒し、謝ってすがるような無様なことは出来るはずがない。
博之は頭が半分パニックになった。すぐに香織を連れて、別の場所に逃げ出そうと考えたが、次の瞬間、博之の頭は完全なパニックになってしまった。野次馬の中に千鶴を見付けてしまったのだ。彼女も香織と同じ選択科目で生活実習室に来たところだった。一体何があったのか理解出来ずに、口を「いーっ」と横に開いて驚いた表情をしている。
「ああ、分かった」
博之はそう言って、美術室の中に逃げ込んだ。後は周囲の冷たい視線に耐えるしかなかった。それは男らしくない行動だった。
一部始終を見ていた男子は、博之が振られた格好になったので同情的だったが、その時の状況から噂は独り歩きして、博之が悪者になることは間違いない。