映画 戦国生徒会
第7章: 気持ちの変化
博之は父親が迎えに来るまで、病院のロビーで待つことになったが、クラブのメンバーは先に帰って、映画スタッフが残り、今後の予定を話し合った。
(福田悠人) 「これじゃ、暫くはキッドのシーンは撮れないな」
(木田博之) 「予定が押してるのに、スマン」
(中川豊) 「その間に別の役者のシーンとか、取り直さないといけないシーンがあるから」
(佐藤千鶴) 「じゃ、私はほとんど休みね。木田君(博之)と一緒のシーンばっかりだもん」
(中川豊) 「副会長単独カットも、結構あるからね」
(木田博之) 「そうだよ。佐藤さん(千鶴)が休んだら、みんな来なくなるよ」
これは、博之の本音だった。美少女の千鶴が参加しているからこそ、たくさんのスタッフが毎日手伝いに来てくれているのは明白だった。このことを敢えて口にして、みんなのやる気を維持させたかったのだ。
千鶴は博之が意外なことを言ったのが嬉しかったので、
(佐藤千鶴) 「なら、来ます」
と、博之を見て言った。
そこへ、自動ドアからジャージ姿の香織が入ってきた。博之を見るなり、顔色が変わって泣き出した。
「大丈夫なの? こんなの首に巻いて、カオナシみたいじゃない!」
(*カオナシ:千と千尋の・・・のお化けのこと)
「大丈夫じゃないけど。そんな泣くほどじゃないから。それにカオナシじゃなくって、カオ(香織)がいてくれるし」
香織は博之の父親が来るまでずっと、車椅子の側にしゃがんで待った。みんなもその周りにいたが、千鶴は近藤と一番遠巻きに立っていた。
父親が到着して、博之は車椅子を降り、歩いて車に乗り込んだ。
香織は学校に戻らなければならなかったので、博之は香織と同じクラスの津田に頼んで、そこでみんなとは別れることになった。
博之は翌日から3日間学校を休んだ。
事故の翌日、香織は博之の自宅に見舞いに行った。博之はテニスの後に、わざわざ遠い家にまで来てもらうことは大変だし、家族の手前遠慮して、毎日来なくてもいいと言った。その代わりに次の日からは、博之から香織に電話した。久しぶりに長電話も出来た。しかし、博之は撮影のことが気になって仕方がなかった。