映画 戦国生徒会
梅雨のこの時期、思うように撮影スケジュールがこなせなくなってきていた。中川の焦りも大きくなっている。
そこでクマ先生の提案で、雨の日は、撮影完了したシーンから編集を始めることになった。すると数々の不具合が分かってきた。
(近藤彰正) 「ちょっと待てよ。コイツ、つないだ前のカットでは黒い靴だったのに、次のカットじゃ青いスニーカーになってるじゃないか!」
(山崎凜花) 「あれ、カッターシャツのボタンが留められていたはずが、今は外れてるよ!」
(福田悠人) 「お前、散髪して髪型が変わってしまってるじゃねえか」
(中川豊) 「なんで一人だけ右向いてるんだよ。次のカットにつながらねえ」
(椋ノ木優愛)「虎吉のオネエメイク、段々濃くなってきてるわ」
(杉田時生) 「こいつ後ろで笑ってないか?」
(野崎賢斗) 「あっ! 今、ガラスに津田が映り込んでた」
(津田柚華) 「またカメラ目線」
これらのシーンはなるべく撮り直すようにしたいが、元のシナリオが、ほとんど屋外撮影だったので、ますますスケジュールが押すことになってしまい。博之は体操部を休むことも多くなってしまうだろう。
映画の撮影は根気との戦いだ。ワンカットずつの撮影は楽しい時間だったが、集中力を切らせると、様々な問題が出てくる。毎日撮影に参加していたスタッフと主要な役者たちは意識が高くなっていったが、たまに来る、千鶴目当ての冷やかしは、ジャマ以外の何物でも無かった。
少しでも撮影を進めるために、「龍子」役の恵美莉が文芸部の才能を発揮して、シナリオに変更が加えられた。ドサクサに紛れ、自分の台詞まで少なくしてしまったが、中川が映像で表現するということで納得した。
この映画のストーリーは、最終的にクラブ活動費を自由に使えるように生徒会長の承認印を押すため、会長印鑑の争奪戦へと展開していくのだが、生徒会長役の博之がその印鑑を握って、様々なクラブの追っ手から逃げ回るシーンを、とにかく屋根のあるロケーションに変更された。
ある時は巨大ショッピングモールを駆け抜け、ある時はお寺の回廊を走り回って塀の屋根から飛び降り、またある時は地下駐車場に忍び込んで、駐車中の車をすり抜けて走ったりした。
「コラー! 待てー!」
警備員に見つかって怒られることもあった。でも大概は高校生の罪のない活動として、厳重注意で開放されて、学校に通報されるところまではいかなかったのだが・・・