映画 戦国生徒会
第5章: 一致団結
蒸し暑くなり始めた6月の中ごろ、この日の体育の授業は、走り高跳びである。博之は体操部ということもあり、運動は得意だ。今までの高跳びの記録は、175cmだった。その高さをクリアしたのは、学校でも、たった3人だけだ。
博之は、次に自分の身長と同じ高さ、178cmにバーを上げ、新記録に挑戦した。
「惜しい!」
「もうちょっとだぞ」
「タイミングがずれた!」
「きっと跳べるぞ」
クラスの期待を一身に受け、2度挑戦したが、クリア出来なかった。これでこの日の課題は終了したのだが、授業が終わるまで挑戦しても良いということになり、博之やその他数名がこの高さに挑戦した。しかし、何度やっても限界ぎりぎりのこの高さは、クリア出来ない。
ついに終業のチャイムが鳴り、器具の片付けが始まったが、博之含め3人ほどは諦めきれずに、休み時間まで挑戦を続けていた。
次の体育の準備にぞろぞろとよそのクラスの生徒もやって来て、みんなが見守る中、残りのタイムリミットに焦りながら、博之は順番を待った。 そこへ千鶴もやって来た。博之はそれに気が付いて、一瞬で気分が変わった。(今、行ける)そう思った。
大きくストライドを取って、初めて挑戦する時のようなリラックス感で、踏み切れた。博之の体は背面で高く弧を描いて、いつもこすっていたふくらはぎは、すべるようにバーをすり抜けた。
博之は3回胴上げされて、地面に落とされた。
この日の記録は校内でちょっとした話題になっていて、その後暫く博之は「鳥人」というあだ名になった。
「高跳びすごかったね」
放課後、千鶴が初めて博之に話しかけてきた。
「え? 見てたの?」
白々しかったが、照れ隠し。撮影以外のことで話をするのも初めてだ。この日から博之は少しリラックスして、千鶴と話出来るようになった。