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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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映画 戦国生徒会

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 中川はすごい男だ。いつも何か新しいアイデアを持っていた。それだけいろんな映画を観て真似したいシーンがたっぷりあったのだろうが、暇を見てカメラでテスト撮影しては、アングルがどうのこうのと、こんな面白いカットになったとか、予想外の光の効果に喜び、どこかのシーンで活用した。
 最初は中川と近藤がカメラを回していたのだが、途中から写真部の金城ミリアと桐谷修斗が参加することになって、カメラを任された。二人は金城が2年生部長で、背の低い桐谷は1年生の姉さん女房カップルだった。近藤も引き続きカメラ操作していたので、これで複数台のカメラで同時撮影が可能になった。

 毎日、博之はLINEで、竹刀を構える恵美莉の姿や、大ケガ役のメイクの写真を香織に送っていた。
(熱中し過ぎじゃない。撮影って、そんなに面白いものなのかな?)
香織は博之が全然会ってくれないことが、心配になってきていた。


 「龍子」初登場のシーンは、香織が毎日練習をしているテニスコート横の通路で撮影が行われた。龍子役の恵美莉もすっかりスタッフに慣れて、和気あいあいで撮影は進められた。
 その日の香織は、練習に集中出来なかった。博之の相手役が美人の千鶴であることは知っていたが、目の前で自分の恋人が、他の女と話しているのには冷静でいられなかった。
 でも実際は、博之が千鶴と話をしたことはほとんどない。彼女をスカウトしてきた近藤の方が断然、千鶴と近い距離にいて、他の男子が割って入る余地などなかった。また、いつも中川から博之と千鶴の双方に演技指導されるので、二人が演技について直接話し合うこともほとんどない。むしろ台詞以外で会話したことなどなかったくらいだ。
 この日、近藤の演出で、画面の奥にテニスをする生徒が映り込むような角度で撮影されたが、香織はそこに映らないように隠れてしまっていた。

「今日の撮影楽しそうだったね」
 下校途中、香織は博之より少し前を歩きながら、そう言った。
「毎日楽しいよ」
香織は少しすねて話していたが、博之はそれに気付いていない。
「川崎(恵美莉)さんて、ヒロ君のこと、キッドって呼ぶんだね」
「うん。中学の時のあだ名だけど、スタッフも最近そう呼ぶようになってきた」
香織は振り返って、自転車を押す博之の肘をつかんだ。
「・・・・・・ラブシーンみたいなのってあるのかな?」
「そんな濃いシーンなんかないよ。バカだな。そんなの心配してんのか?」
「それはバカじゃなくても、気になりますけど」
と言って手を離した。
「なんだよ。機嫌悪いな」

 香織は博之に文句を言ったことなどなかった。博之は決して遊び人ではないが、女子にソコソコ人気があり、放っておくと誰かに盗られないかという心配が常にあった。実際、香織自身もそんな周囲から抜け駆けした、押しかけ女房のようなものだと分っていたので、博之が100%自分に向いていると実感したことなど一度もなかったのだ。
 この晩、香織は泣いた。

作品名:映画 戦国生徒会 作家名:亨利(ヘンリー)