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荏田みつぎ
荏田みつぎ
novelistID. 48090
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それから(それからの続きの続き)

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(ああ、道理で・・草が伸び放題だった訳だ・・。婆さん、遣りっ放していても構わない草を口実に、俺と容子さんの仲を取り持とうとしたんだな・・)
見れば、容子さんは、顔を紅らめながら俯いている。

まあ、その様な本音と、孫を思う婆さんの気持ちを垣間見て、
(俺の死んだばあちゃんと同じだな。孫って、可愛いものなんだな・・)
と、家族愛ともいうべき、婆さんの純粋さを感じた。

社長の実家を後にした時、外は、既に真っ暗くなっていた。
実家での話が、話だけに、帰路の二人は、言葉少なだった。
その、ある意味、気まずい雰囲気を破ろうとしたのか、容子さんが、
「遅うなりついでじゃけん、この上の公園に登って、星を見てから帰らん(帰りませんか)?」
という。
「そうですね・・」
「・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・・」
其処は、本当に静かな、小さな公園。
山頂の広場には、誰も居ない。乗用車が、10台も停まればいっぱいに成る程度の整地された場所に駐車する。そして、薄暗い外灯の案内で、木製の展望台に上がる・・。
其処から見えるものは、概ね薄い黒を背景とした空に、黒々と浮かぶ山々の輪郭のみ。
遠くに街の明かりがぼんやりと見えるが、その街の喧騒すら感じさせない。
「・・・」
「・・」
「・・・」
「・・」
「案外、星が、見えんね。」
「そうですね。でも、ひとつ、ふたつしか見えない星も好いですよ、なんだか、貴重品の様で・・」
「あんた、意外に詩人じゃね・・」
「昔、詩を書いた事、有るんですよ。」
「そう? どんなの?」
「死んでやる! って・・」
「・・・」
「そうなれば、詩人でなくて、死人だ・・」
「・・あまり面白うない・・」
「ですよね・・ すみません・・・」
「・・・」
「・・」
「さんばんくん・・・」
「・・?」
「・・一回だけ、抱いてくれる・・? そしたら、諦めるけん・・ 諦められると思うけん・・」
「・・抱く・・って・・・」」
「抱くだけ・・」
「ああ・・」
その容子さんの言い方を聞くうちに、俺は、俺が、悪い事をして彼女を悲しませている様な気になった。
そして、なんだか、急にもの悲しくなり、同時に、こんなにも素直に自分の気持ちを伝えてくれる人に応えられない自分が、この世でいちばんの罪人ではないかとさえ思った。
俺は、ゆっくりと彼女を抱いた。
彼女は、暫くは立ち尽くしたままだったが、やがて、俺の背中に腕を回して、右の頬、そして左の頬と、俺の胸にくっ付けて、長い時間じっとしていた・・。
どれくらいの時間が過ぎたか分からなかったが、彼女は、
「ごめんね・・」
と、小さく言った。
「俺の方こそ・・ すみません・・」
そういうと、彼女は、声を殺して泣き出した。
泣いて・・その涙が、俺のTシャツに染み渡った頃、彼女は、
「ありがとう・・」
と、聞こえない程の声で言い、俺から身体を離した。