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秋上がりの女

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男根を埋め込むと、男がなぶってくる、
「昼間から、つっこまれてんのか」
「昼間から、つっこまれてます」
と女はこたえる。
この調子で責め続けて欲しいと思った。ベッドのすみで、足を広げて、交わっている。女は頭の中で自分のかっこうを再生しながら、性欲を高めていった。
「ほんとにいやらしいな、足を広げて、パンテイが足首に着いたまま、やられてんのか」
このパターンも、ありふれてはいるが、どの男性にも好まれる。ヒールとか、ニーハイソックスとか、を身につけたまま、本番を始めたがるのだ。エロビデオの定番のひとつだともわかっている。
それでも、この男にはふさわしくない、もっとスマートにやってほしい、女はそう思いながらも、今はこのセックスパターンに浸ろうとした。
「犯してください」
女はさらに男を煽る。男は、女が責められるのが好きだと、決めつける。男が決めつける思考には年季が入っている。男というものはたいていそういうところがあるのだ。
男根が硬さを増す。男根を抜き差しする。
女が両手を男の背中にまわそうとすると
「両手を上げてろよ」
男は命令する、女は従う。いい調子だ、この男はわかっている、もっと責めて欲しい、女は思った。言葉が状況を一挙に展開させる。
男根の動きにあわせて、女は低いうめき声を上げ続ける。うめき声を上げ続けるときは、感じている時だ。男は女の表情が気に入ったに違いない。女が感じているのがわかるだろう。
「まだ、感じるのは早い、声を出すな」
グッドタイミングではないか、女は命令されて喜ぶのだ、そうでなくっちゃ、こういう被虐設定が好みなのだ。禁止と解放、タブーとの闘いが、女の性欲の個人史である。それでも、この男には似合わない、もっと斬新な工夫はないのか、とつぶやく。
被虐的な行為は、あくまで、女が主人公であるべきだ。悲劇であれ、その舞台を演じるのは女だ。そうだからこそ、責めにも耐えられる。耐えて耐え抜いて、究極の性欲を充たし、充たされる。
この男は、女が、言葉をからみあわせて、からだも深く反応することがわかってきた。
「あふれてきた」
「滑りやすくなった」
男は言葉で表現して、女をほめる。くわえて花芯の状況を実況中継する。女はじっと、耐えている風情を示す。
男そのものの動きが激しくなる。ああ、この男も勘違いしている、これからなのに、もう終わるの、まだでしょ、と女は心の中で呟く。勘違いは、この男が付き合ってきた女たちに責任があるのだ。これでは、従軍慰安婦だ。男社会のセックスは、女を産業戦士の従軍慰安婦にしてしまい、まったく進歩がない。
「なま本番、オーケーか」
男はエロビデオの悪影響か、なま本番とは可笑しい。男の動きが止まらなくなり、女にダメ押ししてくる。
「だめー、だめ」
女は言い切る。言い切ることができるよう、貴重な体験を重ねてきた。言った瞬間から、心がさめていく。体も冷めていく。
「ゴム、持ってないの」
その後に続くはずの言葉は、女は飲み込んだ。あなたの排泄物はゴミですよ、ごみは包んで捨てるもんです、女は頭の中で男を非難する。心も体も逆回転し始める。男にもわかるはずだ。だから、こういうとき女は、ゴム、と言うのである。
「外で出すから」
「あたりまえでしょ」
きびしい口調である。男のいいわけを、聞きただす。この男の精液はとても受入れられない。男を受入れられないと思い始めると、精液は汚物のような物だ。いやなものは嫌なのだ。この感覚は、男たちにとうてい、理解しがたいだろう。
「ほんとに」
と念を押す。恋人と違って、喧嘩腰には言えない。
「だいじょうぶやから」
女が抗わないのをたしかめると、男はふたたび、動き始める。男根が二度三度、はねる。
「外へ出してください」
女は男に命令する。危険を察して、警告したのだ。男は、自身を抜いて、女の腹の上に射精した。
二つの肉体が重なって、そのはざまに、もう一つの生命がうごめいている。部屋は静かだ。精液の処理をしなければ、ベッドを汚してしまうから、男は自身を抱え込むようにして、離れる。自分の処理がすむと、男は戻ってきて、女の身体にまとわりついた精液を拭った。
「ありがとう」
女は、不満が残っているはずの男に、一声かけると、口元だけで、ほほえんだ。一休みである。
「たしか、昼間、仕事しているよね」
「仕事、してますよ」
「お金、貯めて、なにするの」
「おしゃれ、けっこう、いるんですよ」
「お金、貯める方、使う方」
「2000万ぐらい、貯めてるわ」
「すごいね、マンションとか買ったら」
「自由なほうがよい」
「ふーん、人と違うな」
「違うかしら」
「違うと思うよ」
「一回り、大きくなりたいの」
「女性は、男しだいというようなところがあるなあ」
「それがいやなのよ」
女があまりにきっぱり、言い切るので、男は次の言葉に窮した。この女のことをまったく理解できないのだ。
「お風呂、入れてくださる」
男は、お湯を入れた。
「もう、たっぷりや」
男は、ベッドの女に声をかけた。
「お風呂、大きいから、ホテルが好き」
と言いながら、女は浴室に向かった。
風呂上がりのやわらかい女のからだを、男はなでた。なでているうちに、男性自身の硬度が増してきた。
「お元気ですね」
 こういう余裕が恨めしくて男は非難して女に言った、
「生本番でないと、いけないんやね」
女がいかなかったと思ったのだ。女は手を伸ばして男根を握り、言葉ではなく行動して返事をした。急所をつかんだ気分でもある。
「もう一回、しようか」
男は、ベッドに女を寝かせると、足を開かせて、割って入った。
「えー」
女は気分が乗らない。しかし、男は男性自身を挿入する。
「なま本番、オーケーか」
「困ります」
 この男は、こういうパターンなのだ。女がまったく分かってない。もうこれっきりにしよう、とも思ってしまう。まあまあ、と自分をなだめる。
「娼婦なんやろ」
 男は女をののしる。責めているつもりだ。これはゲームなのだ、と女は自分に言い聞かせる。男はもう止まらない、止められない。男の生理だから仕方ない、女はさめていく自分を励ましながら、頂点に向かっていく男を助走する。もう介護みたいになってくる。
「仕事です」
「いっぱい出してください」
「気持ちよくなって下さい」
「わたしのもの、つかって気持ちよくなって下さい」
「ごしごし、してください」
 女は男の絶頂感を促すように、つぎつぎと声をあげて、刺激的な言葉を乱発した。男自身はもう全力疾走、気持ちが高ぶっていき、たちまち射精する。男根は摩擦に弱いから、こすり始めると早いものだ。二度目なので、お腹の上の精液はもう量も少ないのがわかる。
 男は満ち足りたように、ぐったりしている。
「重くないか」
「だいじょうぶです」
 男は元のやさしい雰囲気に戻って、声をかけてきた。男の方が重心をずらす、そうして、ふたりとも、しばらくじっとしていた。音のない世界である。いつも思うが、何も考えなくてよい自堕落な大切な時間である。いけたのなら、虚脱状態になるべきところだが、なかなかそうはならない。しばらくしてから、男は女を離れると、ティッシュを持ってきて、女の中心部も拭いた。
「出てきたなあ」
作品名:秋上がりの女 作家名:広小路博