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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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冰(こおり)のエアポート

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「雪景色にしては汚いな」
2日前の積雪が、車の跳ね上げる泥で茶色に凍った道路を、博之はタクシーの窓から見ている。
やっと日本に帰れると思いながら、空港に向かっていた。
いつもながら、中国での仕事は予定通りに行かず、ようやくストレスから開放されると、安堵しているところだった。

このような道路の状態なので、フライト時刻より余裕を見てホテルを出たのだが、
「空港まで渋滞はありますか?」
「問題ない。いつもと同じね」
運転手の話では、道路はあまり混雑してないようだ。

博之の会社では、飛行機のシートはいつもエコノミーで予約されている。なので、博之自身でビジネスクラスにアップグレードする必要があった。
もう四十近い博之は、海外出張を重ねるうちにマイレージも貯まり、ビジネスクラスに乗るのが当たり前になってきている。
そのために必要なアップグレードポイントを、時折、氷の塊にタイヤが跳ね上げられるタクシーに揺られながら計算していると、次回のアメリカ出張の分が少し足りないことに気付いた。
さすがに来月、サンフランシスコまで10時間以上のフライトを、エコノミーシートで我慢するのは、身長180cmの博之にはきつい。

(今日のフライトのアップグレードを諦めて、エコノミーにしよう)
どうせ日本まで3時間足らずのフライトである。ほんの少しの我慢だと思った。

タクシーは凍結した路面をものともせず、予想していた時刻より早く、大連国際空港に到着した。